| 科長(教授) | 河田 政明 |
|---|---|
| 医員(助教) | 宮原 義典 |
子ども医療センター開設に伴いその中心として整備されてきた小児心臓血管外科は、小児だけでなく成人先天性心疾患の診療にも積極的に取り組む必要性を生じていた。このため平成20年4月循環器センター内に組織された“成人先天性心疾患センター”での手術治療、外来診療も担当することから“小児・先天性心臓血管外科”と改称され、活動範囲を拡大してきた。小児領域においては小児科(循環器グループ)、NICU、小児手術・集中治療部、PICUなどと密な連携を図り、院内だけでなく、院外施設とも連携しながら手術症例数の増加を得てきた。成人領域では循環器内科との連携は密度を増している。平成21年に流行したいわゆる新型インフルエンザは脳症だけでなく劇症型心筋炎、重症肺炎から高度の循環呼吸不全を示す例が見られ、各種薬剤や人工呼吸だけでなく機械的循環呼吸補助装置(ECMO:extracorporeal membrane oxygenation)による集中治療が必要となる場合もあり、当科で各科と協力してECMO治療の担当をしてきた。心臓手術では新生児、乳児例が中心となり、この種の専門施設としての役割を果たしている。対象疾患も段階的修復を必要とする複合疾患の比率が増加している。また他施設の患者さんのセカンドオピニオン受診や当院の患者さんの他院へのセカンドオピニオン希望についても積極的に対応している。さらに情報提供をいただいた他院入院中の重症疾患の患者さんについては小児科と協力して専門的な立場での訪問診療も行い、紹介元のスタッフとの連携を図り、家族との情報共有にも参加し、治療方針の決定や家族との対応の援助なども積極的に行なっている。
外科専門医 宮原 義典
心臓血管外科専門医 宮原 義典
| 新来患者数 | 3人 |
|---|---|
| 再来患者数 | 624人 |
| 紹介率 | 80.0% |
88手術
(成人心臓血管外科で行われた先天性心疾患手術を加えた先天性心疾患全体では92手術)
| 動脈管開存 | 5 | |
|---|---|---|
| 大動脈縮窄(複合奇形合併も含む) | 2 | |
| 大動脈弓離断+心室中隔欠損(一期的修復) | 2 | |
| 純型肺動脈閉鎖 | 2 | |
| 総肺静脈還流異常 | 2 | |
| 心房中隔欠損 | 16 | |
| 三心房心+肺静脈還流異常 | 1 | |
| 房室中隔欠損(心内膜床欠損)(不完全型・完全型) | 3 | |
| 心室中隔欠損(+心内膜炎 1) | 30 | |
| バルサルバ洞動脈瘤破裂 | 1 | |
| ファロー四徴 | 8 | |
| ファロー四徴+肺動脈閉鎖 (心室中隔欠損+肺動脈閉鎖)(+MAPCAsを含む) |
1 | |
| 両大血管右室起始 | 2 | |
| 完全大血管転位 | 1 | |
| 単心室・無脾症候群・多脾症候群 | 5 | |
| 左心低形成症候群 | 4 | |
| 僧帽弁狭窄・閉鎖不全 | 1 | |
| 三尖弁閉鎖不全 | 1 | |
| 肺動脈sling(先天性気管狭窄合併) | 1 | |
| 心臓腫瘍 | 1 | |
| ペースメーカー植え込み術・交換術 | 3 | |
| 機械的循環呼吸補助装置(ECMO)による心不全・呼吸不全治療 | 3(死亡2) | |
| 開心術後心不全 | 1 | |
| 呼吸不全(低酸素血症) | 1 | |
| 肺高血圧 | 1 | |
など
| 体/肺動脈(ブレロック-タウシッヒ)短絡術 | 8 |
|---|---|
| 肺動脈絞扼 | 4 |
| 両方向性グレン吻合術 | 2 |
| Fontan・TCPC手術 | 4 |
| 肺動脈再建・形成 | 3 |
| 右室流出路形成 | 7 |
| 三尖弁人工弁置換 | 1 |
| 僧帽弁人工弁置換 | 1 |
| 動脈スイッチ手術 | 1 |
| ノーウッド手術 | 3 |
など
| 未熟児・新生児(1ヶ月未満) | 17 |
|---|---|
| 乳児(1-12ヶ月) | 28 |
| 1-9歳 | 30 |
| 10-20歳 | 5 |
| 20歳以降 | 11 |
で92件中45件(56%)が1歳未満例であった。
| 二期的胸骨閉鎖 | 12 |
|---|---|
| 心タンポナーデ・術後出血 | 4 |
| 横隔膜縫縮 | 1 |
| 創部感染・離開 | 4 |
| 機械的循環・呼吸補助装置装着・交換あるいは離脱・気管形成術 (小児外科)補助(術後心不全、呼吸不全(低酸素血症)) |
4 |
| 極小低体重新生児の先天性房室ブロックに対する 一時的体外式ペーシング |
1 |
など
| 手術死亡 | 1(心不全 1) |
|---|---|
| その他非手術例でのECMO装着後の死亡 | 1 |
| 病院死亡 | 1(遷延性肺高血圧) |
| ※剖検 | 2 |
●成人先天性心疾患(循環器センターに入院)では(成人)心臓血管外科との協力の下に33~71歳の11例(初回手術9例、再手術2例)の手術治療が行われたが、上記のうち複合疾患に対する再手術例を中心に7例を担当した。
心房中隔欠損5例、心室中隔欠損2例(+感染性心内膜炎 1)、小児期ファロー四徴修復術後の三尖弁位人工弁機能不全(2回目)1例、高度低形成肺動脈による低酸素血症を示すファロー四徴1例 などであった。
手術数は当科での手術が始まった2005年3月から年間手術数は29、57、94、103、107と増加が見られたが、2010年は88例と減少した。しかしながら手術例では特に重症例の新生児・乳児開心術が増加が続いている。
※その他、PICU内で実施する手術に準じた処置数も増加(2010年32処置)した。
人工心肺装置を用いた心臓手術(開心術)は当課の治療の中心をなしており、新生児例、低体重例でもその安全性は飛躍的に向上し、臨床工学技士スタッフ、麻酔科スタッフとの密な連携や学内・学外での研修の賜物といえる。特に最近注目されている左心低形成症候群や大動脈弓の異常を示す例では麻酔科・小児科とも連携して術前からの先進的なCO2 ・N2などを用いた呼吸ガス管理を導入し、術前状態の安定化を図り、術中の血液ガス管理を用いた超低体温循環停止法を併用するなど安全性の向上を図っている。また術後急性期管理の中心を担うPICU看護士のこれらの治療に対する精通だけでなく、積極的な貢献は患者さんだけでなく家族の満足度につながっている。
機械的循環呼吸補助装置(ECMO:extracorporeal membrane oxygenation)による生命維持、回復援助治療:成人での経皮的心肺補助装置(PCPS:percutaneous cardiopulmonary support)に相当。新生児、乳幼児、学童あるいは成人までを対象とする。PCPSが循環不全のみを対象とするのに対し、ECMOは重症肺炎などによる呼吸不全も治療の対象とする。本治療は人工心肺装置と同様、臨床工学技士の全面的協力で行われている。
現在、3A一般病床と共に、2010年4月からPICU4床から増床された6床を臨床活動の基盤としているが、子ども医療センター開設後の紹介・受診患者数の増加、低年齢化、重症化は著しく、産科・小児科での胎児エコー診断技術の向上もあって、特にPICUの病床の不足が大きな問題となり、一部ではPICU満床のため定期予定手術が中止・延期とせざるを得ない事態も見られた。また院内全体の問題ともなっている手術数の絶対的増加も当科についても当てはまり、現在の週2日の手術日ではこうした緊急性を要する新生児、乳児の患者さんたちへの対応に問題を生じつつある。当初新生児・乳児期早期の先天性心疾患周術期管理に対応することを目的に8床で計画・開設されたPICUであり、早期手術適応とされながら待機を余儀なくされている患者さんが増加している現状に注意しながら、スタッフの経験増加を軸に、スタッフ数増員、病床数・手術枠の増大を図り、安全で良質な医療の提供を目指したい。
小児・先天性心臓血管外科(小児心疾患および成人の先天性心疾患全般の外科治療を対象とする)として担当範囲の拡大を明確にし、新たに開設された成人先天性心疾患センターでも中心的役割を担うことを目標としてきた。これにより院内・院外からの紹介や患者さんの受診をより円滑・容易にでき、長期的展望に立った医療が提供できるものと考えられる。成人先天性心疾患センターは学内だけでなく、周辺医療機関からの紹介などにも積極的に対応し、従来担当部署が不明確なままであったこの領域の再整備を行い、北関東地域での中心的立場を担えるよう活動する。これにより大学病院併設型として設立されたとちぎ子ども医療センターの本来の役割ができるものと考えられる。カンファレンスは外部一般からの参加も受け付け、教育、啓蒙的役割にも配慮して行きたい。さらに循環器内科・小児科循環器グループなどとも協力して学外での啓蒙活動も行うことを目標としている。