循環器センター内科部門(循環器内科)【アニュアルレポート】
1.スタッフ(2023年4月1日現在 派遣者除く)
科長 | (教授) | 苅尾 七臣 |
---|---|---|
副科長 | (教授) | 新保 昌久 |
医局長 | (准教授) | 原田 顕治 |
病棟医長 | (学内講師) | 大場 祐輔 |
外来医長 | (講師) | 小形 幸代 |
(教授) | 今井 靖 | |
(学内教授) | 星出 聡 | |
(准教授) | 船山 大 | |
甲谷 友幸 | ||
(講師) | 小森 孝洋 | |
渡部 智紀 | ||
桂田 健一 | ||
(学内講師) | 上岡 正志 | |
(助教) | 清水 勇人 | |
横田 彩子 | ||
渡邉 裕昭 | ||
(特命助教) | 小古山由佳子 | |
(病院助教) | 久保田香菜 | |
石山 裕介 | ||
小林 久也 | ||
奥山 貴文 | ||
篠原 肇 | ||
成田 圭佑 | ||
佐藤 雅史 | ||
青山 泰 | ||
三玉唯由季 | ||
齋藤 俊祐 | ||
シニアレジデント | 11名 |
2.診療科の特徴
コロナ禍は続いており、入退院数を調節しながら診察を行っている。すなわち、附属病院の感染対応レベルに合わせて、待機できる入院患者数を調整しているが、緊急・準緊急の入院は制限をしていない。働き方改革により、時間外就労を減少させ続けたが、心カテ室を2室から3室に1室増やして稼働する事により、結果的には、心臓カテーテル、不整脈アブレーション、デバイス埋め込み等の治療件数は、昨年度より増加している。
自治医大循環器内科には栃木県のみならず、茨城県、さらには群馬県、埼玉県などの隣県からも多くの患者が紹介来院され、昨年の外来患者総数は新患が1,186人、再来は27,399人だが、救急搬送の数が増加したため、紹介割合は105.1%と増加しており、多くの患者の診療を行った。外来診療では初診専門が1診、一般再診外来が3診、専門外来が1~2診で行っている。専門外来には高血圧外来、血管外来、不整脈外来、ぺースメーカー・ICD外来、冠疾患外来、成人先天性心疾患外来、SAS外来、肺高血圧外来を行っている。入院診療は、循環器センターとしては定床77床(内CCU10床)の外科部門と混合となっており、センター外に20床を所有している。入院患者は急性心筋梗塞、心不全、不整脈が中心であるが、近年は肺塞栓、慢性閉塞性動脈硬化症などの末梢血管疾患、血栓疾患も増加してきている。心臓カテーテル検査、経皮的冠動脈形成術は増加の一途であり、その生命予後改善効果も含め、外科治療と肩を並べられる成績が得られてきている。さらに、末梢動脈の血管形成術は近年増加の一途で、良好な治療成績を収めてきている。心不全患者に対しては基本的薬物療法の徹底と運動、食事、生活指導を多職種連携して行っている。両室ペースメーカー(CRT)および両室ペースメーカー機能付き植込み型除細動器(CRT-D)皮下ICDなども適応を見極めて導入している。カテーテルアブレーションは心房細動に対する肺静脈隔離術の症例数が大幅に増加、全体の約半数に達している。クライオバルーンを用いた肺静脈隔離術を積極的に行い、安全性を担保しつつ手技時間の短縮化と治療効果の最適化を目指した心房細動治療に取り組んでいる。ペースメーカー治療においてはMRI対応機種を基本的に植え込み、心室ペーシング部位も右室中隔を第一選択としている。ペースメーカーのリード抜去も必要症例に対し、安全に行う事ができている。心臓弁膜症治療では、経カテーテル的大動脈弁置換術が、内科、外科、麻酔科からなるハートチームにより定期的に実施されるようになっている。マルチスライスCTによる非侵襲的な冠動脈評価はその地位を確立し、冠動脈形成術後やバイパス術後などの評価にもその力を発揮している。さらにMRIを用い、特殊心筋病変の描出にも力を入れている。また、成人先天性心疾患センターの心疾患患者も増加している。今後、地域連携をさらに強化し、栃木県南、茨城県西地区の総括的循環器診療を目指したいと考えている。
認定施設
- 日本内科学会認定施設
- 日本循環器学会認定循環器専門医研修施設
- 日本老年医学会認定老年病専門医認定施設
- 日本心血管インターベンション治療学会研修施設
- 日本高血圧学会専門医認定施設
- 日本不整脈心電学会認定不整脈専門医研修施設
- 経カテーテル的大動脈弁置換術実施施設
- 日本心エコー図学会認定エコー図専門医研修施設
- 成人先天性心疾患専門医総合修練施設
- トランスサイレチン型心アミロイドーシスに対するビンダケル導入施設
認定医・専門医
日本内科学会認定総合内科専門医 | 苅尾 七臣 他17名 |
---|---|
日本内科学会認定内科指導医 | 苅尾 七臣 他31名 |
内科認定医 | 苅尾 七臣 他33名 |
日本循環器学会専門医 | 苅尾 七臣 他28名 |
日本高血圧学会専門医 | 苅尾 七臣 他2名 |
日本心血管インターベンション治療学会専門医 | 船山 大 他2名 |
日本心血管インターベンション治療学会認定医 | 船山 大 他14名 |
日本不整脈学会専門医 | 今井 靖 他6名 |
植込み型除細動器(ICD)治療認定医 | 今井 靖 他4名 |
ペーシングによる心不全治療(CRT)認定医 | 今井 靖 他4名 |
日本超音波学会認定超音波専門医 | 原田 顕治 他2名 |
日本周術期経食道心エコー認定医 | 石山 裕介 他1名 |
日本心エコー図学会心エコー図専門医 | 原田 顕治 |
日本脈管学会認定脈管専門医 | 小形 幸代 |
日本臨床遺伝専門医 | 今井 靖 |
心臓リハビリテーション指導士 | 星出 聡 他1名 |
日本プライマリケア連合学会認定指導医 | 石山 裕介 |
成人先天性心疾患学会認定専門医 | 今井 靖 他1名 |
日本老年学会老年病専門医 | 苅尾 七臣 |
経カテーテル的大動脈弁置換術指導医 | 船山 大 |
3.診療実績・クリニカルインディケーター
1)新来患者数・再来患者数・紹介割合
新来患者数 | 1,186人 |
---|---|
再来患者数 | 27,399人 |
紹介率 | 105.1% |
(紹介割合は、平成26年4月施行の医療法に基づく特定機能病院として算出した)
2)入院患者数
入院患者数 1,845人
男性1,262人 女性583人
平均在院日数 9.3日
3)急性心筋梗塞(AMI)166名
発症24時間以内 144名
急性心筋梗塞(AMI)患者における
入院当日若しくは翌日のアスピリン投与率 100%
4)病名別入院患者人数 2022年
分類 | 略語 | 病名 | 患者数 |
---|---|---|---|
心不全 | CHF | 心不全 | 314 |
虚血性心疾患 | AMI | 急性心筋梗塞 | 166 |
(24時間以内のAMI発症) | 144 | ||
OMI | 陳旧性心筋梗塞 | 348 | |
AP | 狭心症 | 328 | |
post-CABG | CABG術後 | 20 | |
弁膜症 | MVD | 僧帽弁疾患 | 137 |
AVD | 大動脈疾患 | 186 | |
先天性心疾患 | ASD | 心房中隔欠損症 | 15 |
VSD | 心室中隔欠損症 | 1 | |
心筋症 | DCM | 拡張型心筋症 | 13 |
HCM | 肥大型心筋症 | 30 | |
HOCM | 閉塞性肥大型心筋症 | 9 | |
心サルコイドーシス | 24 | ||
不整脈 | SSS | 洞不全症候群 | 72 |
WPW | WPW症候群 | 5 | |
AV-block | 房室ブロック | 107 | |
Vf | 心室細動 | 24 | |
VT | 心室頻拍 | 91 | |
AF/AFL | 心房細動・心房粗動 | 569 | |
PSVT | 上室性頻拍症 | 51 | |
Pacemaker交換 | 57 | ||
感染症 | IE | 感染性心内膜炎 | 22 |
pericarditis | 心外膜炎 | 8 | |
myocarditis | 心筋炎 | 2 | |
血管、血栓症 | Aortitis | 大動脈炎症候群 | 0 |
DAA | 解離性大動脈瘤 | 23 | |
TAA | 胸部大動脈瘤 | 0 | |
AAA | 腹部大動脈瘤 | 0 | |
PE | 肺塞栓症 | 20 | |
IPAH | 特発性肺動脈性肺高血圧症 | 2 | |
ASO | 閉塞性動脈硬化症 | 90 | |
Buerger | バージャー病 | 0 | |
高血圧症 | HT | 高血圧 | 1,059 |
合計(重複あり) | 3,937 |
5)治療実績
1.冠動脈インターベンション
PCI 507件
2.カテーテルアブレーション
293例
6)死亡退院症例病名別リスト
病名 | 人数 |
---|---|
急性心筋梗塞 | 11 |
心不全 | 9 |
肺塞栓 | 2 |
不整脈 | 1 |
その他 | 19 |
合計 | 42 |
7)主な検査・処置・治療件数
①カテーテル検査・治療
心臓カテーテル検査 1,714件
(含:緊急カテーテル)(330件)
PCI | 507件 | |
---|---|---|
AMI/UAP | 298件 | |
Rotablator/OAS/ELCA | 46件 | |
IVUS/OCT | 695件 |
TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術) 31件
カテーテルアブレーション 293件
(内訳)
※心房細動 | 193件(うち、48件がクライオバルーン) |
---|---|
心房粗動・心房頻拍 | 63件 |
上室性頻拍 | 36件 |
流出路起源期外収縮・心室頻拍 | 23件 |
左室起源特発性心室頻拍 | 5件 |
心室頻拍(器質的心疾患に伴うもの) | 5件 |
※心房細動(肺静脈隔離:症例により三尖弁下大静脈峡部、上大静脈隔離を追加)
末梢血管疾患のカテーテル治療 60病変(52症例)
下肢末梢動脈疾患 | 大動脈腸骨動脈領域 | 22病変 |
---|---|---|
大腿膝窩動脈領域 | 25病変 | |
下腿動脈領域 | 13病変 | |
下肢以外の末梢動脈疾患 | 腎動脈領域 | 4病変 |
肺動脈領域 | 1病変 | |
その他の末梢血管疾患 | 肺静脈領域 | 3病変 |
IVC filter挿入 5件(EVTと併施 2件を含む)
②CT・核医学検査
マルチスライスCTによる心臓(冠動脈)診断 628件
心臓PET-CT 50件
心臓MRI 202件
心筋シンチ 578件
テクネ負荷心筋(合計) | 336件 | |
---|---|---|
(運動負荷) | (158件) | |
(薬剤負荷) | (178件) | |
安静タリウム心筋 | 2件 | |
心筋(タリウム+BMIPP) | 35件 | |
BMIPP心筋シンチ | 0件 | |
MIBG心筋シンチ | 154件 | |
安静テクネ心筋 | 4件 | |
心筋ピロリン酸シンチ | 47件 |
③デバイス関連手術
デバイス植込み・交換 141件
ペースメーカー | 新規 64 | 房室ブロック | 33 |
---|---|---|---|
洞不全 | 22 | ||
徐脈性AF | 9 | ||
交換 38 | 房室ブロック | 27 | |
洞不全 | 10 | ||
徐脈性AF | 1 | ||
リード再固定 | 2 | ||
リード抜去 | 2 | ||
ICD/CRT | 新規 19 | 新規ICD植込み (うちSICD 3件) |
11 |
新規CRT-D,‒P植込み | 3 | ||
新規ICM植込み | 5 | ||
交換 14 | ICD交換 | 7 | |
CRT-D,-P 交換 | 7 | ||
リード抜去 | 2 |
(新規合計 83件、交換合計 52件、その他 2件、抜去 4件)
④生理機能検査
トレッドミル負荷試験 115件
循環器内科(外来) | 100件 |
---|---|
循環器内科(入院) | 3件 |
他科 | 12件 |
心肺運動負荷試験(CPX件数) 91件
循環器内科 (外来) | 42件 |
---|---|
循環器内科 (入院) | 47件 |
他科 | 2件 |
心臓エコー検査 8,497件
循環器内科 | 心外+他科 | 合計 | |
---|---|---|---|
外来 | 4,021件 | -件 | 4,021件 |
入院 | 4,042件 | 434件 | 4,476件 |
総合計 | 8,063件 | 434件 | 8,497件 |
(経食道エコー 267件)
Holter心電図検査 1,724件
循環器内科(外来) | 973件 |
---|---|
循環器内科(入院) | 181件 |
その他 | 570件 |
late potential検査 22件
循環器内科(外来) | 14件 |
---|---|
循環器内科(入院) | 7件 |
その他 | 1件 |
⑤リハビリテーション
心臓リハビリテーション 7,759件
8)教室内カンファランス・抄読会(水曜日)
(Clinical Update Conference、Clinical Report Conference)
on-lineも利用したハイブリッド開催(12:30~13:15)
- 1月5日 教授による年頭講話
- 1月12日 薬剤説明<ジャディアンス錠の適応拡大>
- 1月19日 薬剤説明<新規糖尿病用剤 ツイミーグ錠>
- 1月26日 「当院での心アミロイドーシス紹介症例の現状と今後の課題」/薬剤説明<トランスサイレチン型 心アミロイドーシス診断に関する情報提供>
- 2月2日 薬剤説明<選択的尿酸再吸収阻害薬 ユリス錠>
- 2月16日 日循 第263回関東甲信越地方会(2/26)予演
- 3月2日 第86回日本循環器学会学術集会予演①
- 3月9日 第86回日本循環器学会学術集会予演②
- 3月16日 「TAVIアップデート:当院における5年間の成績」
- 3月23日 退職者・派遣者・留学者 壮行会
- 4月6日 学位審査予演①「夜間拡張期血圧低下と低酸素血症は心筋障害を独立して規定する」(久保田香菜)
- 4月13日 学位審査予演②「動脈スティフネスが家庭血圧日間変動と心負荷及び心血管イベントの関係に与える影響」(石山裕介)
- 4月20日 医事課からの説明/薬剤説明(シャディアンス錠の適応変更)
- 4月27日 「ガイドライン解説:非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン」
- 5月11日 「JSCガイドラインフォーカスアップデート版:安定冠動脈疾患の診断と治療」
- 5月18日 「ガイドライン解説:不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン」
- 5月25日 「ガイドライン解説:先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン」
- 6月1日 日循 第264回関東甲信越地方会予演
- 6月8日 入局説明会「循環器内科まるごと相談会」
- 6月15日 Final 循環器臨床カンファランス「高血圧の最新治療~ARNIのエビデンスも含めて」
- 6月22日 「ガイドライン解説:末梢動脈疾患ガイドライン」
- 6月29日 業務改善に関する検討会
- 7月6日 薬剤説明(アンデキサネットアルファ静注用)
- 7月13日 薬剤説明(トルバプタンリン酸エステルナトリウム点滴静注用)
< 夏季休会 >
- 9月14日 ご挨拶と留学報告(牧元久樹准教授)
- 9月21日 薬剤説明「新規GLP-1製剤 経口薬について」
- 9月28日 薬剤説明「フィネレノン(適応:2型糖尿病を合併した慢性腎臓病)のエビデンス」
- 10月5日 外務省医務官の仕事:パプアニューギニア大使館 三木太一先生の講演/ケレンディア錠の解説
- 10月19日 「ガイドライン解説:非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン」
- 10月26日 薬剤説明「ファブリー病 経口治療薬について」
- 11月2日 薬剤説明「サムタス点滴静注 診療科採用について」
- 11月9日 薬剤説明「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022より 高脂血症薬(エパデール)」
- 11月16日 医事課による保険診療に関する説明会
- 11月30日 「日循 第266回 関東甲信越地方会予演」3演題
- 12月7日 薬剤説明「高コレステロール治療薬」
- 12月14日 薬剤説明「高カリウム血症改善薬」
- 12月21日 Journal clubのみ
回診・その他のカンファレンス
- チャートラウンド・教授回診 水 8:00~14:00
- カルディアックカンファ 木 7:45~8:30
- 心カテカンファ 月~金 9:00~9:30
- 心不全多職種カンファ 月 17:30~
- 不整脈カンファ 月 18:00~
- 血管カンファ 火 18:00~
- TAVIハートチームカンファ 水 16:30~
- 成人先天性心疾患カンファ 水 18:00~
4.2023年の目標・事業計画等
- 心疾患治療部の今年度の目標としては、基本的な感染対策を講じつつ、3つのカテーテル室を有効利用してさらに治療実績を重ねていきたい。
①急性冠症候群に対する迅速なカテーテル治療の実践として、全症例でのdoor-to-balloon時間90分以内の達成、②Poly-vascular diseaseの増加に伴う全身血管の包括的インターベンションの実践、③ハートチームによる手術リスクの高い大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)について、今後も地域連携を強化し良好な成績を目指す。ウイズコロナ時代に適応し、他医療機関で対応できない重症症例を受け入れ、引き続き最後の砦としての診療を担って行きたい。 - カテーテルアブレーションにおいてカテーテルアブレーションの古典的適応疾患(発作性上室性頻拍症、心室頻拍症など)の症例数を維持しつつも、需要が著増している薬剤抵抗性発作性・持続性心房細動が大半を占めるに至っている。冷凍クライオバルーン治療および高周波アブレーション治療ともに新しい治療機器を活用しつつ安全かつ治療成績の向上を図り、肺静脈隔離術の症例数を重ねており、再発回避率(初回治療)が発作性75-80%、持続性60%と好成績である。また3次元マッピングを活用しつつ難治性不整脈(陳旧性心筋梗塞、2次性心筋症に伴う心室性不整脈、心臓術後症例)に対して心外膜からのアプローチを含め積極的に取り組んでいる。近年増加する成人先天性心疾患の関連した頻脈性不整脈に対しても最新の3次元マッピングを用いて複雑な頻拍回路の同定が可能となり、積極的にアブレーション治療を進めてきた。また小児循環器科と連携を行い、小児頻拍性不整脈に対するカテーテルアブレーション治療も行っており、いずれも良好な成績が得られている。年々増加する心房細動治療に応えるべく、今後、より一層安全かつ確実なカテーテルアブレーション治療実績を重ねていきたい。
- 植え込みデバイスについて、ペースメーカーはMRI対応機種を原則とし、適宜リードレスペースメーカーの手術も行っている。またICD、CRT-Dといったハイパワーデバイスについては県内における中核施設として症例数を維持しながら遠隔管理システムを活用したデバイス管理を行っている。ペースメーカー、ICD、CRT合わせて150例程度の手術を安全に行いながら、集積されたデータベースを活用して学術活動を推進していきたい。また、レーザーシースを用いたリード抜去や、皮下型除細動器(S-ICD)の手術も引き続き行っていく。植え込み型ループ心電計(ILR/ICM)も引き続き神経内科と連携し、植え込みを積極的に進めている。
- 心臓超音波検査は循環器診療においてもはや必須事項である。昨今のCovid-19感染拡大下においても感染対策を講じ業務に支障がないよう検査を実施できた。今後も、より詳細な「構造的評価」「血行動態評価」を目指し、ますます複雑化する心疾患の治療方針の決定や治療効果判定の中心的な役割を果たしたい。特に経食道心エコー検査における3D解析、ストレインイメージングや負荷心エコー法を用いた心機能評価を日常の検査でも積極的に活用していきたい。TAVIの術中・術前後における心エコー検査は不可欠であり、今後もハートチームの中でも積極的に介入していきたい。以上のように、心臓超音波検査は時代と共により高度な専門的知識や技術が要求される。心臓血管外科との合同カンファレンスでの情報共有や、若手を対象にした勉強会を定期的に行い、全体的なレベルアップを行っていく。
- 核医学検査部門は負荷試験を合併症無く安全に行うことを第一の目標とする。虚血をより明確に鑑別するために、負荷試験は充分な運動量を行い、目標心拍数到達だけではなく心筋酸素消費量と良く相関する、収縮期血圧と心拍数による二重積(Doubleproduct)を25,000以上を到達するようにして、虚血の精度を改善した。負荷心筋シンチの際 テクネシウムシンチとCT同時撮影によるfusion画像により冠動脈の走行に合わせて虚血部位を同定できる。また、テクネシウムによるQGSシンチグラフィをルーティン化し、左室容量および駆出率を客観的に評価し、シンチが苦手とする三枝病変の検出を可能とした。また、TlとBMIPPによるdual SPECTによる虚血や二次性心筋症の評価、更に心不全におけるMIBGによる心筋交感神経障害評価も増加している。国内のMIBGコホート研究より死亡リスクの多変量モデルが作成され、心不全の重症度評価のみならず、心不全死および重症不整脈のリスク層別化、心不全治療効果の判定、長期予後の評価として、MIBGは有効であり、施行件数も増加している。さらにピロリン酸シンチによる心アミロイドーシスの診断や、FDG-PETを用いた心サルコイドーシスや炎症性心疾患の診断も増加している。
- 心臓CT検査では、被ばく低減に配慮し、冠動脈病変の評価はもとより、大動脈弁狭窄症や成人先天性心疾患を含む心構造疾患(structural heart disease)の評価における精度向上を目指す。また、 MRIを用いた心機能解析、心筋障害の質的診断を引き続き積極的に行う。
- 心臓リハビリテーションでは、循環器内科疾患から心臓外科手術後の症例も多く導入することが出来、延べ件数として8,000件/年を超えることができた。医療側の認知度も高まってきたことがうかがえる。来年度以降も、心不全予防外来などと連携し、QOLの改善や再発予防に努める。
- 心不全患者や虚血性心疾患、治療抵抗性高血圧に合併する睡眠呼吸障害のスクリーニングを積極的に行う。心不全治療としての陽圧治療を積極的に導入し、心不全のQOL、予後の改善を目指す。
- 高血圧については、以前より高血圧専門外来を設けている。循環器内科外来に通院する症例のほとんどが対象となる、循環器リスク患者における心臓・血管関連の予後に関する前向き研究が開始され、本院で1000名以上の症例が登録された。また、手首型血圧計を用いた前向き研究も開始され、順調に登録が進んでいる。
- 成人先天性心疾患センターとして、先天性心疾患症例の成人例の外来での診療及び心房中隔欠損症、動脈感化依存症に対するカテーテル治療を積極的に進めていく。また、2022年には卵円孔開存症に対するカテーテル治療について、施設認定を受けた。さらに門脈肺高血圧症(POPH)の診断・治療について消化器内科と連携して進めている。先天性心疾患の治療ガイドとして事前に実施した画像検査をもとに3D模型を作成した後に手技シミュレーションを行う試みを介している。不整脈診療においては高度な3Dマッピングを使用し安全確実な治療に努めていく。
- 心不全治療に関しては、新規心不全治療薬であるARNI、SGLT-2阻害薬、イバブラジンを加えたOMTを確実に行うことに取り組んでいる。これら新規薬剤の使用経験も増している。心不全治療の非薬物治療の必要性は明らかに増し、心移植を念頭に置いたLVAD症例が増加してきている。高齢者心不全の増加、終末期心不全への対応も課題となっている。心不全診療にかかわる多職種、地域医療を支える実地医家、介護サービスとの連携が一層必要となっている。心不全を既に発症した患者だけでなく、心不全予備群に対する取り組みを進めていかなくてはならない。