脳神経センター外科部門(脳神経外科)【アニュアルレポート】
1.スタッフ(2021年4月1日現在)
科長 | (教授) | 川合 謙介 |
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副科長 | (准教授) | 益子 敏弘 |
医局長 | (講師) | 大谷 啓介 |
外来医長 | (講師) | 石下 洋平 |
病棟医長 | (臨床助教) | 小熊 啓文 |
医員 | (教授) | 五味 玲 (小児脳神経外科・兼) |
難波 克成 (血管内治療部・兼) |
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(准教授) | 山口 崇 | |
(講師) | 中嶋 剛 | |
大谷 啓介 | ||
内山 拓 | ||
(助教) | 大貫 良幸 | |
病院講師 | 井林 賢志 | |
病院助教 | 金子 直樹 | |
小針 隆志 | ||
檜垣 鮎帆 (血管内治療部・兼) |
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手塚 正幸 | ||
黒田林太郎 | ||
佐藤 信 | ||
熊谷 真一 | ||
シニアレジデント | 6名 | |
大学院生 | 1名 | |
非常勤講師 | 5名 |
2.診療科の特徴
脳・脊髄脊椎疾患に対する最先端の外科的治療を成人および小児症例を対象に行っている(2020年手術件数 (血管内治療、小児脳神経外科含む):602件)。脳腫瘍(悪性腫瘍、良性腫瘍)、機能的疾患(てんかん、パーキンソン病などの不随意運動疾患、難治性疼痛、三叉神経痛や顔面痙攣)、小児脳脊髄疾患(腫瘍や先天奇形など)、脳血管障害、頭部外傷など外科的治療を要するあらゆる神経疾患を対象としている。脳血管障害、頭部外傷など救急疾患には24時間体制で対応しており、栃木県の脳卒中専門医療機関として認定を受けている。また、厚生労働省のてんかん地域診療連携体制整備事業として、全国8か所の地域連携拠点機関の1つに指定されており、栃木県内のみならず北関東エリアを包括した広域てんかん診療拠点として機能している。脳腫瘍に関しては、複数の手術支援技術を用いた低侵襲の手術治療を実践し、治療成績の向上に貢献している。また、術後の補助療法として放射線治療、化学治療を他診療科の専任スタッフと症例毎に検討し集学的治療を行っている。放射線治療では従来の放射線治療に加え、IMRT(強度変調治療)、VMAT(回転型強度変調治療)等の高精度治療も行っている。てんかん外科では、各種モニタリング・手術等において国内有数の症例数と治療成績となっている。パーキンソン病・不随意運動・難治性疼痛・痙性麻痺などに対する機能的神経外科(刺激・凝固・持続髄注治療・遺伝子治療)も有数の治療実績数と成績を有する。全国に先駆けて導入した自施設内3Dプリンターによる正常解剖・病変部3Dモデリングを術前シミュレーション・インフォームドコンセント・手術トレーニングなどに活用し、安全かつ効果の高い手術治療を実践している。
認定施設
- 日本脳神経外科学会専門医研修プログラム基幹施設
- 日本脳神経血管内治療学会認定研修施設
- 日本てんかん学会専門医認定訓練施設
- 日本定位・機能神経外科学会技術認定施設
専門医
日本脳神経外科学会専門医 | 川合 謙介 他 20名 |
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日本てんかん学会指導医 | 川合 謙介 |
日本てんかん学会専門医 | 川合 謙介 |
石下 洋平 | |
日本脳神経血管内治療学会指導医 | 難波 克成 |
日本脳神経血管内治療学会専門医 | 難波 克成 |
檜垣 鮎帆 | |
日本神経内視鏡学会技術認定医 | 五味 玲 |
山口 崇 | |
中嶋 剛 | |
日本定位・機能神経外科学会技術認定医 | 中嶋 剛 |
日本脳卒中学会専門医 | 益子 敏弘 |
山口 崇 | |
中嶋 剛 | |
紺野 武彦 | |
金子 直樹 | |
小針 隆志 | |
大坂 美鈴 | |
日本小児脳神経外科学会認定医 | 五味 玲 |
小熊 啓文 | |
日本がん治療認定医機構がん治療認定医 | 五味 玲 |
益子 敏弘 | |
山口 崇 | |
日本リハビリテーション医学会認定臨床医 | 中嶋 剛 |
日本外科学会認定医 | 五味 玲 |
益子 敏弘 |
3.診療実績・クリニカルインディケーター
1)新来患者数・再来患者数・紹介率
新来患者数 | 440人 |
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再来患者数 | 8,551人 |
紹介率 | 101.9% |
2)入院患者数(病名別)
病名 | 人数 |
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脳腫瘍 | 157 |
くも膜下出血、脳動脈瘤 | 141 |
その他の脳血管障害 | 132 |
機能的脳神経外科 | 136 |
慢性硬膜下血腫 | 27 |
その他の頭部外傷 | 11 |
その他 | 147 |
計 | 651 |
3-1)手術症例病名別件数
病名 | 人数 |
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脳腫瘍 | 121 |
てんかん・パーキンソン病などの不随意運動症・顔面痙攣 | 82 |
脳動脈瘤 | 25 |
脳出血、その他脳血管障害 | 45 |
脊椎脊髄疾患 | 2 |
先天奇形・水頭症 | 33 |
頭部外傷(慢性硬膜下血腫以外) | 6 |
慢性硬膜下血腫 | 28 |
血管内手術 | 108 |
3-2)手術術式別件数・術後合併症
症例数 | 合併症 | 再手術例数 | |
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脳腫瘍摘出術 | 95 | 2例 | 2例 |
脳動脈クリッピング術 | 25 | 1例 | 0例 |
シャント手術 | 23 | 1例 | 1例 |
機能的手術 | 82 | 2例 | 1例 |
その他 | 269 | 2例 | 2例 |
4)化学療法症例
化学療法症例数:34例
大量MTX療法(メソトレキセート)9例
PAV療法(プロカルバジン、ACNU、ビンクリスチン)0例
IFN療法(インターフェロン)0例
CARE療法(カルボプラチン、エトポシド)1例
ICE 療法(イフォマイド、カルボプラチン、エトポシド)2例
テモゾロミド療法 14例
ベバシズマブ療法 6例
カルムスチン脳内留置療法 2例
5)放射線療法症例・数
放射線療法:29例
6)悪性腫瘍の疾患別治療成績
手術死亡:なし
主要疾患の長期予後
退形成性星細胞腫 | 5年生存率 | 45% |
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膠芽腫 | 5年生存率 | 12% |
1年生存率 | 78% |
7)死亡症例・死因・剖検数・剖検率
死亡者数:20人
剖検数:0人
剖検率:0%
死因
脳腫瘍 | 3人 | |
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脳血管障害 | 16人 | |
くも膜下出血 | 6人 | |
脳出血 | 10人 | |
外傷性頭蓋内出血 | 1人 |
8)主な処置・検査
頭部MRI、頭部CT、頭部3DCT、SPECT、PET、光トポグラフィー、脳血管造影検査
9)カンファレンス
a)脳神経外科内
月曜・水曜・金曜日 | 7時45分~9時 | 入院症例検討カンファレンス |
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火曜 | 14時~17時 | 教授回診、術前術後症例検討、研究報告、抄読会 |
脳神経外科学会研修プログラム連携施設・関連施設合同カンファレンス | 年数回 |
b)他部門との合同カンファレンス
脳卒中センターカンファレンス | 毎週火曜日 7時45分~8時45分 |
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てんかんセンターカンファレンス | 毎月1回 |
放射線治療カンファレンス | 毎週火曜日17時~18時 |
リハビリテーションセンターカンファレンス | 隔週火曜日 17時30分~18時30分 |
c)その他
栃木県脳神経外科研究会 3回/年
エピネット栃木 2回/年
栃木県脳腫瘍懇話会 2回/年
栃木県てんかん研究会 1回/年
薬師寺脳卒中セミナー 2回/年
栃木県脳卒中医療連携クリティカルパス会議 3回/年
d)カンファレンス症例数 約1500例/年
10)キャンサーボード
グループ名 なし
実績 1年間 0回
4.2021年の目標・事業計画等
脳血管疾患に関しては脳神経外科内で血管外科医、血管内治療医の双方の視点から症例検討を行い最善の手術が行えるようにしている。さらに手術適応のない脳血管疾患においても、脳卒中センターカンファレンスを実施し、脳神経外科、脳神経内科の複数診療科の視点から最新の予防医学、脳卒中管理を目指す。血行再建手術の適応症例は、単科診療のみでは診断と治療が困難な症例に対する学際的な検討を推進することで診療レベルの一層の向上を図っていく。
本学は厚生労働省のてんかん地域診療連携体制整備事業として全国8か所の地域連携拠点機関の1つに指定されている。栃木県内のみならず北関東エリアを包括した広域てんかん診療拠点として、より一層の診療の拡充と質の向上を図るとともに、既設のエピネット栃木などを引き続き最大限活用し圏内医療施設、行政との有機的な連携を強化していく計画である。国立研究開発法人日本医療研究開発機構「成育疾患克服等総合研究事業」(研究開発課題名:AADC欠損症に対する遺伝子治療の臨床研究)の受託研究機関として、これまで日本国内の患者を治療対象とし良好な結果を得てきた。今後は海外からの症例に対しても治療を実施する計画である。
悪性神経膠腫において染色体1番短腕/19番長腕欠失、MGMT(O6-methylguanine-DNA methyltransferase)発現、IDH(Isocitrate dehydrogenase)遺伝子変異などを対象とした分子遺伝子学的診断法を導入することでオーダーメイド型治療戦略を確立し一層の治療成績の向上を目指す。脳腫瘍手術において顕微鏡手術に加え、神経内視鏡の併用もしくは、主体的に使用することで、手術侵襲の軽減を図りつつも、腫瘍の摘出率向上を目指す。
これまでに本学先端医療技術開発センター脳機能研究部門およびリハビリテーションセンターとの共同研究により、脳疾患症例における効率的な機能回復を目指した神経リハビリテーション治療を開発してきた。引き続き社会寄与度の高い治療方法を開発し臨床への還元を図っていく。本学子ども医療センターの開設以来、二分脊椎や小児脳腫瘍、てんかん、不随意運動症など小児脳神経外科治療の対象となる症例が全国から紹介されるようになった。小児脳神経外科が独立して存在し、かつ、センター内で他診療科と有機的に連結した国内有数の治療施設である。その利点を最大限に活用した高水準の医療を引き続き実践していく。
2020年はCOVIDによる診療制限があったが、例年と同様の手術件数を施行することができ、脳外科疾患に対して適切な医療を提供できたと考えており、今後も最善の医療を提供できるように尽力していく。