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移植外科【アニュアルレポート】

1.スタッフ(2023年4月1日現在)

科長 (教授) 佐久間康成
外来医長 (准教授) 大西 康晴
医局長 (准教授) 眞田 幸弘
医員 (講師) 脇屋 太一
(助教) 岡田 憲樹
(病院助教) 平田 雄大
(非常勤講師) 水田 耕一
松本 光司
シニアレジデント 2名

2.診療科の特徴

当診療科の特徴は、

  1. 病院をあげた支援体制のもと、新生児から成人に対応できる肝移植施設
  2. 年間症例数は本邦の小児生体肝移植の約15%
  3. 胆道閉鎖症、OTC欠損症、メープルシロップ尿症、新生児肝移植などに対する肝移植数が本邦有数
  4. 消化器内科(小腸鏡治療)や放射線科(IVR)と連携した低侵襲の合併症治療
  5. 移植後10年生存率(約95%)が全国平均と比べ高く本邦最高
  6. 永続的な外来管理(現在、肝移植後患者は約400名)。当院で肝移植をされた患者さんは、令和4年12月までに、21都道府県から368例であり、東日本の肝移植の拠点施設としての役割を果たしている。
  7. 腎臓外科と連携し腎臓移植の診療支援を行っている。

認定施設

  • 脳死肝移植認定施設(全国25施設)
  • 脳死小腸移植認定施設(全国12施設)
  • 脳死膵臓移植認定施設(全国21施設)

専門医、指導医

日本外科学会指導医 佐久間康成、大西 康晴、眞田 幸弘
日本外科学会専門医 脇屋 太一、岡田 憲樹、平田 雄大
日本移植学会認定医 佐久間康成、眞田 幸弘、大西 康晴、平田 雄大
日本肝臓学会指導医 眞田 幸弘
日本肝臓学会専門医 岡田 憲樹、平田 雄大、佐久間 康成
日本消化器外科学会指導医 佐久間康成、眞田 幸弘、脇屋 太一
日本消化器外科会専門医 岡田 憲樹、平田 雄大
日本肝胆膵外科学会高度技能指導医 佐久間康成
日本内視鏡外科学会技術認定医 佐久間康成
消化器がん外科治療認定医 佐久間康成、眞田 幸弘、岡田 憲樹、平田 雄大
日本消化器病学会専門医 眞田 幸弘
日本超音波医学会指導医 眞田 幸弘
日本小児栄養消化器肝臓学会認定医 眞田 幸弘
日本消化器内視鏡学会指導医 佐久間康成
日本臨床腎移植学会認定医 佐久間康成
日本膵臓学会指導医 佐久間康成
米国外科学会フェロー 大西 康晴
腹腔鏡下移植用部分肝採取術プロクター 佐久間康成

3.診療実績・クリニカルインディケーター

1)新来患者数・再来患者数・紹介割合

新来患者数 77人
再来患者数 2,520人
紹介割合 66.7%

2)入院患者数(病名別)

病名 患者数
肝移植後 111
肝移植ドナー 26
肝移植後肝障害 12
胆道閉鎖症 11
肝移植後胆管炎 9
肝移植後胆管狭窄 9
NASH 7
PSC 7
PBC 6
ALC 5
肝移植後門脈狭窄 3
アラジール症候群 3
急性胃腸炎 3
Wilson病 3
LC 3
肝移植後菌血症 2
胆管閉塞症 2
C型肝炎 2
先天性肝線維症 2
腸炎 2
胸水貯留 2
肝膿瘍 2
胆管癌 2
急性肝不全 1
下肢浮腫 1
解離性障害 1
COVID-19 1
限局性腹膜炎 1
妊娠 1
脳梗塞 1
虫垂炎 1
消化管出血 1
腹壁瘢痕ヘルニア 1
グラフト不全 1
摂食障害 1
中耳炎 1
腎結石症 1
肥満 1
回転性めまい 1
アナフィラキシーショック 1
CMV感染症 1
門脈圧亢進症 1
合  計 253
子どもセンター 51(20%)
附属病院 202(80%)

3-1)手術症例病名別件数

病名 人数
肝移植ドナー 20
肝移植後 6
胆道閉鎖症 5
肝移植後肝静脈狭窄 4
肝移植後胆管狭窄 4
NASH 4
腹腔内出血 3
アラジール症候群 2
肝移植後門脈狭窄 2
急性肝不全 2
PBC 2
PSC 2
胆管閉塞症 2
ウィルソン病 2
C型肝炎 2
虫垂炎 1
小腸出血 1
胆汁性肝硬変 1
ALC 1
肝動脈血流低下 1
門脈圧亢進症 1
腹壁瘢痕ヘルニア 2
先天性肝線維症 1
胆管狭窄 1
横行結腸穿孔、腹膜炎 1
合  計 71

3-2)手術術式別件数・術後合併症件数

術式 患者数
生体肝移植 20
脳死肝移植 1
肝移植ドナー 20
肝右葉切除術 15
拡大肝左葉切除術 3
肝外側区域切除術術 2
血管合併症 6
門脈IVR 4
肝静脈IVR 2
胆管合併症 9
PTBD入れ替え 5
小腸内視鏡 2
PTBD 2
その他 15
開腹止血術 3
胆管胃瘻拡張術 2
腹腔鏡下肝生検 1
虫垂切除術(開腹) 1
開腹肝生検 1
横行結腸双孔式人工肛門造設術 1
開腹洗浄ドレナージ+気管切開術 1
経皮的肝生検 1
腹腔鏡下肝切除術 1
開腹肝生検+血管造影検査 1
腹壁瘢痕ヘルニア根治術 2
胆管空腸吻合術 1
合計 71

4)悪性腫瘍の疾患別および臨床進行期別ならびに治療法別治療成績

肝細胞癌症例への生体肝移植 1例

5)死亡症例

1名(真菌血症)

6)主な処置・検査

1)腹部超音波検査(含むカラードップラー)

肝移植術前術後の入院症例に対し定期的に行った。特に移植術後の症例は1日2~3回施行し、術後合併症の早期発見に努めた。入院患者(1日平均7人)に対しては、早期合併症の検索のため平均3人/日のペースで施行した。外来患者(1日平均10人)に対しては、遅発性合併症の検索のため平均3人/日のペースで施行した。

2)肝生検(2022年:計131件/年)

移植手術時の全身麻酔下、開腹下または腹腔鏡下での肝生検(楔状切除)、血管・胆管合併症の処置など全身麻酔時の肝生検(針生検)に加え、肝移植前の肝機能評価や酵素活性評価、肝移植後の肝機能障害(急性拒絶反応)、肝移植後プロトコール肝生検、及び他科からの依頼症例に対し、全身麻酔下、静脈麻酔下、局部麻酔下において、肝生検を施行した。

3)胆道造影(2022年:計18件/年)

こども医療センターまたは自治医大附属病院放射線部において、術後外ステントチューブ挿入症例および肝移植後胆管狭窄によるPTBD挿入症例に対し、PTBDカテ交換、PTBDカテ抜去を含め、胆道造影を施行した。

4)カテーテル挿入(2022年:計18件/年)

中心静脈カテーテル挿入0件、ブラッドアクセスカテーテル挿入1件、抹消挿入式中心静脈カテーテル挿入7件を施行した。

5)ドレーン処置(2022年:計55/年)

肝移植後の胸水貯留および腹水または腹腔内膿瘍症例に対し、超音波ガイド下または透視下による腹腔穿刺、腹腔ドレーン入れ替えは40件であった。その他、肝移植前の胸腹水貯留症例に対し、超音波ガイド下または透視下による胸腔・腹腔穿刺を7件施行した。

7)カンファランス症例

1)病棟・外来症例カンファランス

平日の朝夕2回、全入院患者においてクリニカルカンファランスを実施した。外来で問題があった症例や、他院や患者からの問い合わせも、担当者が報告しスタッフ全員への情報共有を行った。個々の問題については、関係する他科医師と合同での症例検討を行った。

2)肝移植適応評価カンファランス

肝移植予定の2~3ヶ月前に、成人肝移植症例と小児の問題症例に対して、消化器内科、移植外科、消化器外科、麻酔科、止血血栓部、および個々の問題に関連する部署を招聘し、肝移植の適応評価のためのカンファランスを行った。

3)肝移植術前カンファランス

肝移植2日前に、全ての肝移植症例に対し、麻酔科、ICU、消化器外科、止血血栓研究部、中央手術部・ICU看護師、薬剤部、輸血部らと、肝移植術前カンファランスを施行した。

4)合併症カンファランス

術後の合併症にて入退院を繰り返している症例や、複雑な合併症例例に対して、治療方針の決定のため、他科を交えたカンファランスを行った。

5)膵臓移植勉強会

内分泌内科と合同での勉強会を開催。また、大動物を用いて摘出シミュレーションも行った。

4.2023年の目標・事業計画等

1)臨床面での発展

  • 膵臓移植の開始
  • 小児、成人肝移植症例のさらなる増加
  • 成人並びに再移植症例への免疫抑制療法の検討。
  • 新生児ヘモクロマトーシスに対する胎内ガンマグロブリン大量静注療法の臨床試験
  • 短腸症へのポリアミンを用いた臨床研究および腸管リハビリテーションの推進

2)研究面での発展

  • 胆汁酸分析と質量分析イメージング法による小児肝疾患の早期診断ならびに病態解明
  • エクソソームによる前転移ニッチ形成における好中球細胞外トラップの意義
  • 肝移植後拒絶反応の病態解明と直接イオン化法による革新的迅速診断法の開発
  • 肝移植周術期における免疫抑制薬の時空間解析による3次元TDMの構築
  • 腎組織内薬物分布動態とメタボローム解析を融合したタクロリムス腎症機序解析
  • 肝胆膵疾患を対象としたヒトiPS細胞を用いた病態解明に関する研究
  • ミトコンドリア病に対する肝移植の有用性の検討
  • AIを用いた地域医療の均てん化
  • 空間トランスクリプトーム解析による移植肝の微小免疫の解明
  • 肝移植後の肝組織所見を予測する深層学習モデルの構築
  • Wearableデバイスを用いた移植後早期血流障害の診断

5.過去実績