小児脳神経外科[アニュアルレポート] | 病院のご案内 | 自治医科大学附属病院
病院のご案内
  1. トップページ
  2. 病院のご案内
  3. アニュアルレポート
  4. 小児脳神経外科

小児脳神経外科【アニュアルレポート】

1.スタッフ(2021年4月1日現在)

科長(学内教授) 五味  玲
臨床助教 小熊 啓文

2.診療科の特徴

脳腫瘍、先天奇形(二分脊椎、水頭症など)、脳血管障害(もやもや病など)、外傷、てんかん・痙直などの機能的疾患など、小児脳神経外科疾患全てをまんべんなく扱っている。五味以外は脳神経外科からのローテーションであったが、小熊が脳神経外科との兼務ながら固定した。また他施設の脳神経外科専攻医が研修に来て3人体制となった。

2020年は手術数も入院患者数も前年より増加した。

①脳脊髄腫瘍

手術、放射線、化学療法を含めた総合的な治療体制を確立して治療に当たっている。小児脳脊髄腫瘍全般を対象としている。

2020年は腫瘍関連の手術数は摘出術13例、内視鏡生検などの生検術6例と非常に多かった。初発例は12例。視床膠芽腫2例、視神経膠腫、中頭蓋窩類皮腫、後頭蓋窩上衣腫、大脳巨大腫瘍(病理検討中)、小脳腫瘤(病理は炎症)と胚細胞腫瘍がなんと5例もあった。胚細胞腫瘍は全例男子で松果体発症が4例、1例が珍しい脳室前角内の病変であった。再発例は4例で、上衣腫2例、小脳脳幹の毛様細胞性星細胞腫、悪性glioneuronal腫瘍であった。

AYA世代の患者の治療をどこが担当するかは難しい問題だが、今年は高校生の松果体胚細胞腫瘍の症例は、小児脳神経外科担当で、成人病棟で手術と術後の放射線・化学療法を行った。それ以外の中学生以下の例では、補助療法は小児科が担当し、子ども医療センターで治療を行った。臨機応変で、適切な治療を提供できる体制としている。

小児期に発症し21歳で再燃播種をきたした悪性glioneuronal腫瘍の女性が、成人病棟で亡くなった。このような症例も、小児緩和ケアチームカンファレンスの対象症例として検討し、外来は子ども医療センターで多科での対応ができた。看護師・リハビリ・心理士・地域支援なども含めた多職種での対応する体制が確立している。

小児期に発症し21歳で再燃播種をきたした悪性glioneuronal腫瘍の女性が、成人病棟で亡くなった。このような症例も、小児緩和ケアチームカンファレンスの対象症例として検討し、外来は子ども医療センターで多科での対応ができた。看護師・リハビリ・心理士・地域支援なども含めた多職種での対応する体制が確立している。

放射線治療についても、放射線治療部と週1回カンファレンスを行い、綿密な連携体制のもと施行している。積極的にIMRTを用いて、正常組織への照射量低減を試みている。定位放射線治療は、宇都宮セントラルクリニックのサイバーナイフ治療に当院放射線治療部の先生たちがかかわっていることから、上衣腫播種病変に対してサイバーナイフ治療を選択した。

今年の大きな変化は、がんゲノムプロファイリング検査(パネル検査)が保険収載され開始されたことである。これによって、患者個々に有効な分子標的薬が見つかることになった。ただ、再発播種した悪性glioneuronal腫瘍の方で有効な治療薬候補が見つかったが、適応外で自費診療となり検討しているうちに病状が進行して使用できずに終わったのが残念であった。

一方、JCCG(日本小児がん研究グループ)の固形腫瘍観察研究に登録し、この研究の範囲内でも遺伝子変化の検出が可能である。あくまでも研究レベルではあるが、1例予後不良の視床膠芽腫の例で特殊な遺伝子変異が判明し、その結果、国際治験に参加することができた例があったことも、特筆に値する。治療開始後半年、無再発である。

②先天性疾患(二分脊椎、水頭症など)

今年は、脊髄髄膜瘤の修復術はなかった。係留解除手術9例は、全例初発の潜在性二分脊椎であった。円錐部脂肪腫3例、先天性皮膚洞・類皮腫1例、終糸脂肪腫・終糸肥厚症4例であった。

2008年に開設した二分脊椎外来も13年目となり、他施設からの紹介もこれまで同様多い。小児脳神経外科、小児泌尿器科、小児整形外科、小児外科、小児科などの多科が協力して診療を行っており、治療方針の決定も毎月の二分脊椎カンファレンスで検討している。今年は手術例がなかったが、二分脊椎外来で再係留症状が早期に発見され手術に至る例も多い。

シャント手術が9例と昨年の4例よりは増加したが、2018年の25例からは少ない。初発の乳児水頭症が3例で、それ以外はシャント再建であった。

今年のシャント手術での大きな変化は、バクティシールという抗菌薬入りのカテーテルの使用ができるようになったことである。欧米のデータで、有意にシャント感染率を低下させることが示されており、当院でも小児例では積極的に使用する方針としている。有用性が期待される。

頭蓋骨縫合早期癒合症の手術は主科は形成外科であるが、手術はほぼ全例小児脳神経外科との共同手術で行われている。2020年はMCDO法を2例共同で手術を行った。

その他の先天性疾患では、乳児期にくも膜嚢胞で嚢胞腹腔シャントを施行した13歳男子のシャント不全例があり、あらためて嚢胞脳槽開窓術を施行したが無効であった。すでに嚢胞壁が著明に肥厚しており、シャント依存性になっていることがその後の経過で判明し、乳児期に嚢胞脳槽開窓術を行う必要性を強く感じた。

③脳血管障害

今年も脳血管障害の手術例が多かった。特に、もやもや病のバイパス手術は昨年同様で今年も6例あった。間接血行再建術3例、直接&間接血行再建術を3例であり、年齢や病態によって選択している。やはり低年齢では直接の難易度が高く、緊急性がない場合は間接血行再建術を選択することが多かった。

その他に、耳鳴で発症した硬膜脳動静脈瘻の治療例が1例あった。

④頭部外傷

頭部外傷の手術例は1例であった。交通外傷でチャイルドシートから放り出された乳児の急性硬膜下血腫の開頭摘出術例で、急性脳腫脹に伴う広範な脳損傷があり、治療にはPICUのスタッフの強力なバックアップがあり、何とか救命できた。

社会的に虐待が問題となっているが、本年は当科では対象となる重症例はなかった。

⑤機能的疾患(てんかん、痙直)

2016年から小児のてんかん手術が本格的に開始され、当院小児科や他施設からの紹介例も増加してきている。本年も2例の手術を行った。1例が全脳梁離断術で、1例が前頭葉離断術であった。当院が全国8施設のてんかん拠点病院であることもあり、今後も一定数の症例が続くと考えられる。

また痙直・痙性麻痺に対する髄腔内バクロフェン持続髄注ポンプの交換術も1例施行した。

・認定施設

日本小児血液・がん専門医研修施設

・専門医

日本脳神経外科学会専門医 五味  玲
小熊 啓文
日本小児神経外科学会認定医 五味  玲
小熊 啓文
日本神経内視鏡学会技術認定医 五味  玲
日本がん治療認定医機構がん治療認定医 五味  玲

3.診療実績・クリニカルインディケーター

1)新来患者数・再来患者数・紹介率

新来患者数 43人
再来患者数 1,243人
紹介率 90.0%

2)入院患者数 (病名別)

病名 患者数
頭部外傷 10
脳腫瘍 17
二分脊椎 11
水頭症 8
キアリ奇形 1
機能(てんかん・痙直など) 6
血管(もやもや病・AVMなど) 15
その他 5
合計 73

3)手術症例病名別件数

病名 症例数
脳脊髄腫瘍(摘出術) 14
血管奇形 1
もやもや病 6
頭部外傷 1
頭蓋・脳奇形 5
脊髄奇形(二分脊椎等) 9
シャント手術 9
内視鏡手術(生検含む) 9
機能 3
感染 4
その他 10
合計 71

4)化学療法症例病名別・数

病名 症例数
視床膠芽腫 2
視神経膠腫 1
胚細胞腫瘍 4
髄芽腫 1
上衣腫 1
合計 9

(小児科転科で施行したものも含む)

化学療法マニュアル

CARE:CBDCA+VP-16
CBDCA+VCR (外来で可能)
VBL単独 (外来で可能)
TMZ単独 (外来で可能)
アバスチン単独 (外来で可能)
経口VP-16療法 (外来で可能)
MTX髄注療法 (外来で可能)
その他の化学療法は小児科転科で施行している。

5)放射線療法症例・数

視床膠芽腫 2例
上衣腫 2例(1例は他院でサイバーナイフ)
悪性glioneuronal腫瘍 1例
胚細胞腫瘍 4例(1例は2021年に施行)

6)悪性腫瘍の疾患別治療成績

橋神経膠腫 平均生存期間9.7ヶ月
髄芽腫 5年生存率 83%

7)死亡症例・死因・剖検数・剖検率

死亡症例は脳腫瘍1名(悪性glioneuronal腫瘍)

剖検はなかった。

8)カンファランス症例

二分脊椎カンファレンス
第一水曜日(祝日は休み)

2/5 症例検討会
3/4 症例検討会
4/1 症例検討会
6/4 症例検討会
7/1 症例検討会
9/2 症例検討会
10/7 症例検討会
11/4 症例検討会
12/2 症例検討会

今年は二分脊椎研究会がコロナウィルスのために延期された関係で全て症例検討会だった。

その他は脳神経外科と同様に行っている。
小児緩和ケアチームカンファレンス(隔週火曜日)
虐待についてのカンファレンス:適宜開催

4.2021年の目標・事業計画等

  • JCCG脳腫瘍グループとしての共同研究の継続。
  • 「頭のかたち外来」の新設をめざす。
  • 様々な臨床研究を計画・推進する。

5.過去実績