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臨床研究センター 臨床研究・治験推進部【アニュアルレポート】

1.スタッフ(2022年4月1日現在)

センター長 北山 丈二
部長 坂東 政司
副部長 服部  由、和田 妙子
薬剤師 8名
看護師 13名
臨床検査技師 1名
事務職 5名

(治験・臨床研究等に関連する資格)

日本臨床薬理学会認定CRC 石川真由美、石山 裕美、大澤美千代、大島  悟、小嶋 亜純、坂田友里子、澤口 武尊、下村 明子、鈴木久仁子、服部  由、前田由利子、儘田  洋、若松 朋恵
日本臨床試験学会認定GCPエキスパート 鈴木久仁子
日本臨床試験学会認定GCPパスポート 大澤美千代、竹林 美幸、服部  由、和田 妙子

2.臨床研究センターの特徴

2016年4月に自治医科大学附属病院で行われる臨床研究(治験を除く)、保険適応外診療及び先進医療実施に際し、臨床現場を支援する目的で設置された臨床研究センター臨床研究支援部と、2008年4月に「治験活性化5ヶ年計画」に基づき、治験等の臨床試験を活性化させるために発足した臨床試験センター(2013年とちぎ臨床試験推進部に名称変更)は、2020年4月より1つの部門に統合され、「臨床研究・治験推進部」として業務を行っている(図1)。

【臨床研究】

当部門が支援する研究は、治験が薬機法及びGCP省令を遵守して行われるのに対し、「臨床研究法」や「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」等を遵守して行う臨床研究である。最近は、先進医療制度下で実施される研究等もあり、非常に複雑化していることから、当部門では研究ごとに支援内容・方法を検討し、通常診療と平行してスムーズに研究が行われるよう適切な支援を心がけている。

当部門は、薬剤師又は看護師資格を有した臨床研究コーディネーター(CRC)及びデータマネージャー(DM)と、事務員が在籍し、大学側とも密に連携し、臨床研究の適切な実施に努めている。

【治験】

治験や臨床研究を実施して最先端の治療法や医療技術を確立することは、高度先進医療の一角を担う医科大学病院の使命である。その中でも治験は、既存の治療法では治癒困難な難治性疾患等に対する「新薬」の創出を目的としており、その推進は人々の健康福祉や医学の発展に大きく寄与する。

当部門では、2021年には14名のCRCが専従として従事しており、11名が日本臨床薬理学会認定CRCの資格を取得して質の高い治験等の支援業務を提供している。

現在は治験等に関連する業務を総合的に行っており、企業主導治験や医師主導治験を支援している。

さらに、当部門は治験審査委員会(IRB)事務局も兼ねており、事前ヒヤリング、IRBの資料作成、議事要旨の作成、治験等の契約及び治験等に関わる必須文書の保管・管理等、IRB運営のための業務全般を法令に準拠して行っている。

図1.臨床研究センター 臨床研究・治験推進部の組織図

図1.臨床研究センター 臨床研究・治験推進部の組織図

3.実績及びクリニカルインディケーター

【臨床研究】

(1)2020年度までの実績

図2は当部門設立からの年度別の支援件数の推移であり、平均して常に60件前後の研究を支援してきた。なお、臨床研究法の経過措置終了後の2019年度以降、臨床研究法に基づき行われた特定臨床研究及び非特定臨床研究の平均支援件数は32件で、全体の58.4%であった。

図2.年度別平均支援件数(研究)

図2.年度別平均支援件数(研究)

(2)2021年度の実績

図3は2021年4月から 12月の月別の平均支援件数を示している。人員不足等も影響し、平均して55件を支援するにとどまっている。

2021年4月から12月までの新規の支援依頼は、5件(特定臨床研究2件)と昨年度と比較すると減少しているが、これは学会等でも言われているように、新型コロナ蔓延により新たに開始する臨床研究が減少していることに起因していると思われる。本年度は新規の支援依頼は少なかったが、大学側とも協力し、本学主管の特定臨床研究の立ち上げ支援を開始しており、外部機関とも連携した支援体制を構築した。

図3.2021年度月別支援件数(研究)

図3.2021年度月別支援件数(研究)

【治験】

(1)治験実績

2016年度から2020年度までの新規治験受託件数、治験の総実施件数の年次推移を示す(図4、5)。また、5年間(2016年度~2020年度)の治験の平均新規受託件数は31.0件(87.0症例)、製造販売後臨床試験は0.2件(0.4症例)、製造販売後調査は32.6件(125.8症例)であった。治験の新規受託件数は通年30件前後で推移しているが、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響を受けやや低迷している。さらに、治験患者の組入を制限したこともあり、2020年度の組入率は57.5%と、前年より低かった。また、治験の中で国際共同治験が占める割合は年々増加しており、2020年度は治験全体の72.5%を占めており、国際標準で難易度の高い治験を積極的に行っている。

図4.新規受託件数(治験)

図4.新規受託件数(治験)

図5.総実施件数(治験)

図5.総実施件数(治験))

(2)医師主導治験の実施支援

医師主導治験は企業主導治験と異なり治験に係わる業務を治験責任医師が全て行わなければならなく、その業務量は企業主導治験の十数倍にのぼるためCRCが全面的支援を行わなければ実施困難となる難易度の高い治験である。当院では2006年に参加型医師主導治験の支援体制を整備し、支援を開始した。支援件数は年々増加しており、2020年度は11件(産科婦人科、リハビリテーション科、内分泌代謝科、移植外科、小児科、臨床腫瘍科等)の支援活動を行なっている(図6)。

図6.医師主導治験の総実施件数(新規+継続)

図6.医師主導治験の総実施件数(新規+継続)

(3)小児治験ネットワーク支援業務

2020年度は小児治験ネットワークを介した治験の受託はなかった。

小児治験ネットワークを経由して治験の実施可能性を打診する調査は、2020年度では8件の可能性調査に協力している。また、CRC教育研修プログラムとして他医療機関より研修生を受入れ、2日間のCRC実施研修を行っているが、2020年度は中止になった。

(4)市民向けの治験啓発活動

市民に対する啓発活動の一環として毎年市民公開講座を行っているが、2020年度は新型コロナウイルス感染拡大を懸念し中止とした。

(5)薬学部学生に対する治験実習

通常は3グループの薬学部学生(各グループ8名)が当院での病院実習期間約2ヶ月半のうちの2日間を当部門で実習するが、2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、実習に制限がかかった。そのため、2グループ体制(各グループ10名)の2日間を、実地とWebで対応した。治験を行う意義、生命倫理等の講義をはじめ、CRC業務経験(患者の対応)や治験薬の管理等を通して治験の重要性を認識して貰った。

4.研究業績

【臨床研究】

(1)学会発表等

鈴木久美栄、大澤美千代、下村明子、田口奈名絵、菊地紗奈恵、柳沼かおり、本間涼季、和田妙子、坂東政司、北山丈二:特定臨床研究に関する業務マニュアルの作成~業務の統一化を図るために~ 第21回CRCと臨床試験のあり方を考える会議、2021(横浜)

【治験】

(1)小児医薬品開発ネットワーク支援業務

日本小児科学会が国立成育医療研究センターに委託している小児医薬品開発ネットワーク支援事業として、製薬企業から提出された開発計画を検討するワーキンググループが発足し、当部門スタッフがその一員として参加した。

(2)学会発表

儘田洋、澤口武尊、服部由、坂東政司:盲検化を伴う受託治験の割合と非盲検スタッフの業務内容に関する調査 第21回 CRCと臨床試験のあり方を考える会議、2021(横浜)

5.2022年の目標・事業計画等

【臨床研究】

(1)本学主管の特定臨床研究の積極的な支援

外部機関や大学側と連携し立ち上げに協力してきた本学主管の臨床試験が近々開始される。当該研究が適切に実施されるよう、積極的に支援していく。

(2)学会発表

臨床研究法の施行後、臨床研究におけるコーディネーター業務の難しさは、学会等でも取り上げられている。当院における具体的な支援内容を、学会等を通じて外部に発信していくことで、臨床研究推進の一助となるよう努める。

(3)研修会などへの参加

2021年6月に、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号。)」が施行された。本指針は、個人情報保護法の令和3年改正に伴い、2022年も改正が予定されている。また、臨床研究法についても、2021年12月に厚生科学審議会臨床研究部会から「臨床研究法施行5年後の見直しに係る検討の中間とりまとめ」が公開され、臨床研究実施体制の国際整合性等の大きな論点が明確になってきた。これらに関する研修会等には積極的に参加し、迅速に対応できるよう準備する。

【治験】

(1)新規治験積極的受入・治験実績アップ

診療科の間で治験受け入れにばらつきがある。治験の受託実績が少ない診療科には引き続き新規治験の受け入れを要請していく。

2020年度の患者の治験組入率は57.5%となり、厚労省が目標としている80%を下回っている。引き続き治験実施に関連する治験責任・分担医師の負担を軽減し、患者の組み入れがし易くなるような環境を整え、支援体制を強化していく。

(2)小児治験ネットワーク関連の小児治験活性化

小児科領域では小児適応のない医薬品を使用することも少なくなく、その適応外使用が社会的問題にもなっている。小児治験ネットワークは小児科領域のこれら課題解消に向けて活動しているが、当院も本ネットワークに参加して引き続き積極的な活動を行う。

(3)地域住民の治験に対する意識変化

引き続き市民公開講座『薬が誕生するまでを知りたくありませんか?』を開催する予定である。日程等は現時点では未定となっている。

(4)当部門スタッフによる治験業務関連研究推進

引き続き治験業務に関連した研究を積極的に行い、学会発表・論文投稿につなげていく。

6.過去実績