皮膚科【アニュアルレポート】
1.スタッフ(2021年4月1日現在)
科長 |
(教授) |
小宮根真弓 |
外来医長 |
(講師) |
佐藤 篤子 |
病棟医長 |
(准教授) |
神谷 浩二 |
医員 |
(教授) |
大槻マミ太郎 |
村田 哲 |
(准教授) |
前川 武雄 |
(病院助教) |
杉原 夏子 |
中野 尚美 |
岡田 寛文 |
シニアレジデント |
|
6名 |
2.診療科の特徴
当科では皮膚に症状のある疾患すべてを扱うが、大学病院としての性格上、皮膚がんや悪性黒色腫を中心とする悪性腫瘍、そして水疱症や膠原病、乾癬や重症アトピー性皮膚炎などの慢性の免疫疾患が多いのが特徴である。
入院では、皮膚悪性腫瘍が約7割を占め、手術、化学療法、放射線療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬による治療を行っている。副作用の発現も高い治療であるが、他科との連携をとりつつ適切に対処している。
外来は午前に初診と一般再診、午後は専門外来を設けている。専門外来は、より専門性の高い診療を必要とする疾患、すなわちアトピー性皮膚炎、乾癬、水疱症、膠原病、脱毛症、皮膚悪性腫瘍、皮膚レーザーなどに対するもので、県内だけでなく他県からの紹介患者も数多く来院している。外来ではレーザー治療以外にも紫外線療法、そして簡単な植皮を含めた手術を行うことも可能である。また、外来で診断や治療方針に苦慮する症例について、教授以下全員で診察する機会(外来クリニカルカンファレンス)を設けているほか、皮膚生検を行った症例では病理カンファレンスでの検討も行っており、個々の患者に即した最善の治療を皮膚科全体として追求するシステムを構築している。
乾癬については、2008年の栃木県患者会の立ち上げ以来、専門外来メンバーを中心に啓発活動を精力的に行ってきた。現在、生物学的製剤が多数承認されており、その導入目的の入院を含め、外来と入院の連携、および県内・県外の皮膚科医や一般医との連携を強化している。蕁麻疹やアトピー性皮膚炎においても生物学的製剤が適用となり、また悪性黒色腫へのオプジーボの投与など、皮膚科外来医が扱う治療薬の範囲が拡大している。
なお、新規開発臨床試験(治験)は、乾癬が中心となっているが、それ以外にアトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症を対象とするものも扱っている。
施設認定
- 日本皮膚科学会認定専門医指定施設
- 日本専門医機構認定皮膚科専門研修プログラム基幹施設
専門医
日本皮膚科学会専門医 |
大槻マミ太郎 |
村田 哲 |
小宮根真弓 |
前川 武雄 |
神谷 浩二 |
佐藤 篤子 |
杉原 夏子 |
日本医師会認定産業医 |
小宮根真弓 |
皮膚悪性腫瘍指導専門医 |
前川 武雄 |
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 |
前川 武雄 |
日本褥瘡学会認定 褥瘡認定師 |
前川 武雄 |
下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医 |
前川 武雄 |
3.診療実績・クリニカルインディケーター
1)新来患者数・再来患者数・紹介率
新来患者数 |
1,436人 |
再来患者数 |
23,405人 |
紹介率 |
91.0% |
2)入院患者数
入院患者数 |
515人 |
一日平均患者数 |
22.6人 |
平均在院日数 |
16.0日 |
疾患分類 |
患者数 |
湿疹・皮膚炎・蕁麻疹・痒疹 |
15 |
角化症・炎症性角化症・膿疱症 |
26 |
膠原病・類症・血管炎 |
2 |
水疱症 |
21 |
薬疹・中毒疹・ウイルス性発疹症 |
13 |
感染症 |
26 |
皮膚潰瘍・褥瘡・熱傷 |
27 |
皮膚悪性腫瘍 |
271 |
皮膚良性腫瘍 |
67 |
母斑 |
18 |
下肢静脈瘤 |
12 |
発汗障害 |
11 |
合計(人) |
515 |
平均年齢(歳) |
61.2 |
男:女 |
332:183 |
|
入院 |
外来 |
皮膚悪性腫瘍切除術 |
119 |
25 |
皮膚腫瘍・血管腫切除術 |
82 |
203 |
創傷処理・皮膚切開術 |
0 |
38 |
デブリドマン |
15 |
0 |
母斑レーザー(全麻下) |
7 |
0 |
静脈瘤手術(含:血管内レーザー) |
12 |
0 |
センチネルリンパ節生検 |
15 |
0 |
リンパ節郭清術 |
4 |
0 |
植皮術 |
90 |
0 |
皮弁・筋皮弁術 |
28 |
1 |
その他(リンパ節生検含む) |
7 |
559 |
エキスパンダー |
1 |
0 |
合計(件) |
241 |
825 |
麻酔別手術統計
|
病棟 |
外来 |
局所麻酔 |
140 |
820 |
腰麻・全麻 |
101 |
0 |
3)カンファレンス症例数
|
症例数 |
カンファレンス率* |
外来カンファレンス |
258 |
17.96% |
病理カンファレンス |
113 |
9.64% |
*外来カンファレンス率=カンファレンス症例数(258)/新来患者数(1,436)X100
*病理カンファレンス率=カンファレンス症例数(113)/病理提出件数(1,171)X100
4.2021年の目標・事業計画等
- アトピー性皮膚炎、乾癬、水疱症、膠原病、悪性腫瘍、脱毛症、レーザー治療に関する専門外来をおいて重症で難治な症例の治療を充実させるべく努力を継続している。
乾癬、掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎では生物学的製剤の使用頻度がかなり増加し、患者数も増えたことから、2020年度には近隣の臨床病院や開業医との連携を深めるためのWEB講演会を複数回行った。病診連携パスを作成中であり、今後の病診連携をより容易に行えるようにしていく予定である。また、今後日本皮膚科学会栃木地方会の協力を得て、SNSを用いた県内外での診療ネットワークの構築を計画している。
- 原発巣広範囲切除および再建、センチネルリンパ節生検、所属リンパ節郭清等の侵襲の大きな外科的手術は、県内では当院と獨協医大の2施設のみで主に行っているため、来年度も皮膚外科診療においては県内外や近隣地域の中心的な施設であることが予想される。安全で確実な手術治療を遂行するため、技術のレベルアップに努める。切除不能の悪性腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害剤や種々の分子標的薬が使用可能となっており、最新のがん治療ガイドラインに沿ったシステマティックな治療を目指す。
また、オンコパネルを用いた最新の癌診療も可能となったことから、適切に症例を選択して最新治療にも参加していきたい。
- 下肢静脈瘤の外科的治療は当科が主に行っている。下肢静脈瘤、うっ滞性皮膚炎、うっ滞性脂肪織炎の診断、検査、保存的治療、外科的治療、術後の長期的な指導を含めてさらに充実・発展を目指す。
- 重症薬疹、自己免疫性水疱性疾患、壊疽性膿皮症の患者数は比較的多く、早期の確実な診断を目指す。治療には高容量の副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤の全身投与を必要とするため、副作用の発現に注意しつつ、他科との連携に努め、安全で最適な治療を目指す。
- 湿疹、接触皮膚炎の原因検索のためのパッチテスト施行はこれまで通り積極的に行う。糖尿病性足壊疽、末梢動脈循環不全による足壊疽などによる下肢切断回避のために、足や爪のケアの充実、皮膚潰瘍の適切な診断と治療に努める。日常的な皮膚疾患を含めた皮膚科全般の診療レベルの向上および他科との境界領域疾患の診療を充実させるよう努める。
- 比較的まれな遺伝性皮膚疾患についても正確な診断ができるよう、健康保険が使えるものについてはかずさDNA研究所の協力を得、その他のものについては当科研究室において遺伝子診断を行っている。2020年度には複数例の遺伝性皮膚疾患の遺伝子診断を行った。今後も、免疫組織染色、電子顕微鏡、遺伝子診断を含めた総合的診断システムの構築に努める。