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放射線治療部【アニュアルレポート】

1.スタッフ(2023年4月1日現在)

部長 白井 克幸
技師長 根本 幹央
診療放射線技師(総数) 15名

放射線診療業務には画像診断領域と、がん治療領域の2種類が存在しており、両分野とも非常に専門性が高い。がん治療の3本柱の一つと言われる放射線治療は、放射線診療業務の中でも更に特殊な分野と言える。放射線治療部のスタッフ構成は、放射線治療医・診療放射線技師・看護師・事務職員で構成されている。

2.放射線治療部の特徴

放射線治療部は高エネルギー放射線を用いて、がん患者の治療を行う部署であり、根治・予防・緩和医療と多岐にわたって、患者の生命や予後に関与している。放射線治療部では、リニアック3台、密封小線源治療装置1台、治療計画用CT装置1台を保有しており、これらを使用して放射線治療を行っている。2022年の新規患者数は800名であり、昨年度とほぼ同数である。再診患者も含めると、年間の延べ治療患者では2万人を超える治療を行っている。

照射の内訳も外部放射線治療だけでなく、婦人科疾患を中心とする密封小線源治療は55名、造血組織系疾患に対する全身照射では11名、放射線による外科手術とも言われる定位照射においては38名の患者に治療を行っている。定位照射においては顕著な増加があり、2021年度から1.5倍へと増加している。

外部放射線治療の手技の一つであるVMAT(回転型強度変調放射線治療)の実施率は全治療の25%程であり、2021年と大きくは変わっていない。しかし、根治療法として多くの患者がその恩恵を享受する治療法であるため、対象部位は前立腺がんや頭頚部腫瘍だけでなく、脳腫瘍、上部食道がん、肺がんへと益々拡大するようになった。

また密封小線源治療においては、全症例で画像誘導密封小線源治療(IGBT)が実施されており、組織内照射を組み合わせるHybrid照射も通常手技として行われている。これらの高精度な照射技術を安全に実施するには高い専門性を求められるため、関連資格の取得を更に推奨し、2021年よりも取得者は増加した。現在、関連資格を持つスタッフ(複数種の取得含む)は以下の様になっている。

日本放射線腫瘍学会 認定施設(A)

放射線治療専門医 6名
医学物理士 5名
放射線治療専門放射線技師 6名
放射線治療品質管理士 7名
がん放射線療法認定看護師 1名

特筆すべき点としては、自治医科大学付帯設備整備事業の一環として放射線治療棟の建設が2022年7月より始まった。現区画は本館西棟の地下にあり、附属病院の開院時から使用されている非常に古い区画の一つとなっている。配管・設備等の老朽化が著しく、今後の治療機更新が難しい状況になっていたため、こども医療センター北側の第7駐車場の一部を利用して放射線治療棟が新設されることになった。治療機更新のタイミングと併せて、2023年11月末を竣工予定として工事が進められている。

新設される放射線治療棟には、多数の診察室と患者説明室があり、外光を取入れ明るくゆったりとした患者待合と自由に使える休憩室が備えられている。外部照射で使用する治療室は5室に拡充され、順次、本館の治療機を稼働停止させながら、数年をかけて新棟での4台体制へと移行する。また、最新型の治療機が導入されるため、全ての装置でVMATを実施できる体制へと変わることになる。密封小線源治療室も拡充されて、計画用CT装置と透視装置が同室設置されたシームレスな運用が可能になる。2024年春の臨床開始を目指して、準備を進めている状況となっている。

3.放射線治療部の年ごとの推移

治療患者数
密封小線源治療件数

4.2023年の目標・事業計画等

運用面においては、放射線治療棟の竣工に向けた開設準備と現区画から診療体制の移行がスムーズに出来るよう、準備を進めてゆく事である。新棟では2024年1月より、診察業務と治療計画業務が動きだす。しかし、照射業務は現在の本館側で引続き行われているため、2区画に分かれて業務を行う事になる。スタッフの担務と配置が複雑になり、患者への案内方法もシンプルではなくなる。このため診療に支障が起きないよう注意したい。

診療面に置いては高精度治療件数の増加を目指したいが、現有治療機では、今以上の実施割合を実現するのは容易でないと思われる。新治療棟での照射業務が開始されるまで現状維持できるように、治療機の点検・精度管理に注力してハード面の維持を行いたいと考えている。

またタスクシフト/シェアの推進により、医師の行う治療計画業務の一部を、診療放射線技師が実施する状況になって来ている。スタッフの物理・技術職としての向上はもとより、放射線腫瘍学の臨床的知識の習熟も進めてゆき、高精度治療をより安全かつ効果的に実現できるようにしてゆきたい。引続き全スタッフに対して関連する専門資格を取得頂けるよう促し、教育・研修の観点からも、生涯教育の一環として注力してゆきたい。

過去実績