放射線治療部【アニュアルレポート】
1.スタッフ(2022年4月1日現在)
部長 | 白井 克幸 |
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技師長 | 根本 幹央 |
診療放射線技師(総数) | 12名 |
放射線診療業務には画像診断領域と、がん治療領域の2種類が存在しており、両分野とも非常に専門性が高い。がん治療の3本柱の一つと言われる放射線治療は、放射線診療業務の中でも更に特殊な分野と言える。多職種が集まり総勢120名を超えるに至った中央放射線部は令和3年4月に組織改正が行われ、画像診断部と放射線治療部に再編されて、各々が中央施設部門の一部署となった。新たな部署となった放射線治療部のスタッフ構成は、放射線治療医・診療放射線技師・看護師・事務職員で構成されている。
2.放射線治療部の特徴
国立がんセンターの「がん登録・統計」の報告によると男女とも2人に1人の割合で、何らかの癌に罹患し、男性であれば4人に1人、女性であれば6人に1人の確率で、癌で死亡すると報告されている。この報告からも、癌は家族や友人など身近な人々の中で起きる可能性のある、特別な疾患ではないと言える。放射線治療部は高エネルギー放射線を用いて、がん患者の治療を行う部署であり、根治・予防・緩和医療と多岐にわたり患者の生命や予後に関与している。
当部では、リニアック3台、密封小線源治療装置1台、治療計画用CT装置1台を保有しており、これらを使用して放射線治療治療を行っている。昨年の新規患者数は803名であり、コロナ禍の影響を受けたためか2020年に比べて減少する結果となった。放射線治療単独での治療は非常に少なく、外科手術後、もしくは化学放射線療法後や同時並行で行われることが多い。このため放射線治療適応患者の減少は、感染が拡大してする社会現象が顕著に成った時点よりも少し遅れて表出してきたと考えられた。しかしながら再診患者も含めると、例年と大きくは変わらず1000名を超えるがん患者の治療を行っており、のべ治療患者にすると23000名を超える状況である。
治療の内訳も多岐にわたり通常の外部放射線治療だけでなく、婦人科疾患を中心とする密封小線源治療は67名、造血組織系疾患に対する全身照射では17名、放射線による外科手術とも言われる定位照射においては24名の患者に治療を行っており、国内でも多数の症例に対応する施設となっている。
高い局所制御率と低い有害事象を実現した高精度治療であるVMAT(回転型強度変調放射線治療)の実施率には昨年同様に25%程とであり、根治対象となる患者の多くがその恩恵を享受している。対象部位は前立腺から始まり、頭頚部腫瘍、術後子宮頸がん、脳腫瘍へと拡大され続けている。また密封小線源治療においては、一昨年の年末に更新がされて、より短時間での照射を行えるように変わった。全症例で画像誘導密封小線源治療(IGBT)が実施されており、組織内照射を組み合わせるIC/IS-BTも通常手技として行われている。これらの高精度な治療技術を支えるためには、放射線治療分野の中でも専門性を求められるため、関連する資格を持つスタッフを中心に運用されている。
(下段に資格と保有人数を記載)
高精度治療の促進と維持を目指す一方で、建屋設備の老朽化が進み、現有装置の経年劣化が激しくなり、保守契約を維持することが困難になりつつあるという懸案があった。放射線治療を希望される患者を、更に受け入れたいと考えているが、現実的には厳しい状況であった。このため移設不可能な放射線治療機の更新タイミングを考慮しつつ、放射線治療部のリニューアル計画を10年前から要請していた。この様な状況の中、自治医科大学付帯設備整備事業案が立ちあがり、立体駐車場・ヘリポート整備と同時に、放射線治療棟の建設が承認されるに至った。現在、2024年春の臨床開始を予定して、準備を急いでいる。
日本放射線腫瘍学会 認定施設(A)
放射線治療専門医 | 4名 |
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医学物理士 | 5名 |
放射線治療専門放射線技師 | 5名 |
放射線治療品質管理士 | 6名 |
がん放射線療法認定看護師 | 1名 |
3.放射線治療部の年ごとの推移


4.2022年の目標・事業計画等
2024年春を目標に放射線治療棟の建設準備が進められているため、これに向けた開設準備と現区画からスムーズに診療体制の移行が出来るよう、準備を進めてゆきたい。診療面に置いては高精度治療件数の増加を目指したいが、現有治療機は老朽化が進んでおり、今以上の実施割合を実現するのは容易でないと思われる。新治療棟での診療開始まで、現状を維持できるように、治療機の点検・精度管理に注力してハード面の維持を行いたいと考えている。
また放射線治療は、繰返し照射を行う事で治療効果を得るものである。放射線の線量には、足し算はあっても引き算は無いため、間違いのない安全な治療を継続することが最も重要になる。このためにはチェック機構となる精度管理・品質管理体制の充実が肝要であり、更に内容を充実出来るように検討したいと考えている。
最後にスタッフに関しては、放射線治療の質と安全を担保するためにも、専門資格を持つスタッフの育成は重要になると考えている。関連資格の取得・維持を励行し、更に高精度な放射線治療を実現できる人材の確保を進める。このためにもスタッフ教育・研修については、生涯教育の一環として引き続き注力してゆきたい。