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小児泌尿器科【アニュアルレポート】

1.スタッフ(2022年4月1日現在)

科長 (教授) 守屋 仁彦
医員 (準教授) 中村  繁
(講師) 日向 泰樹
(病院助教) 田辺 和也

2.診療科の特徴

1)小児泌尿器科の特徴

小児泌尿器科として専従スタッフを有する大学は我が国では数少ないが、最近は小児泌尿器疾患に対応できるスタッフを有する大学は増加傾向にある。当科スタッフは、成人を含む泌尿器科学の全般を修めた医師(泌尿器科専門医)により構成され、腎泌尿生殖器の発生・機能・解剖への習熟が強みである。小児泌尿器外科ではない小児泌尿器科が意味するところは、治療手段として、内科的、外科的な両面を有していることを意味する。同時に、子ども医療センター医師として、成長発達過程への理解、子どもを思う両親への配慮などの十分な訓練を積んでいる。近年の小児医療全般の問題として、transition(慢性疾患の成人期移行医療)が取り上げられることが多いが、大学病院との相互乗り入れが可能な当科は、その領域においても先駆的な医療を提供する立場にある。大学所属の小児泌尿器科という貴重な立場にあって、その責務を果たすべく、手術手技や診療指針に関する情報発信については、これを積極的、継続的に行っている。

2)整備状況

外来診療は週3日で診療枠数は適性と思われる。当科の外来診療の特徴として、①手術治療以外に内科的治療方法で診療が完遂される疾患が少なくない(尿路感染、排尿障害など)。②成長発達に応じた経過観察や生活指導など、中期長期にわたる継続的診療が少なくない。女児の外陰膣形成術後の長期フォローが喫緊の課題となっているため、婦人科との協議の上、婦人科側担当医と小児泌尿器科側担当医を設定の上、transitionの実務を発展的に行っている。③泌尿生殖器という臓器診療はナイーブな一面があるのでこれに配慮する、などが挙げられる。小児泌尿器科疾患の全般をカバーするためには、外来診療は、単に入院手術診療を補足するものではなく、それ自体が独立した仕組みを機能させる必要がある。開設以来の問題は、専門的看護師の育成システムが不十分なことである。保険診療や看護ケアのコストパフォーマンスを高める政策的働きかけを学術団体を通じて行う一方で、外来看護師教育を今後も行っていく必要がある。

入院診療においては、週1.75枠(隔週で、週1.5と2.0枠)で手術を行っている。covid19のパンデミックの影響で、入院診療が停滞し病棟稼働率も大幅ダウンしたが、感染状況が収束すれば回復の見込みである。昨今の鏡視下手術やロボット手術の技術革新が、小児領域にも安全かつ確実に取り入れられるように、今後ますます、専門医養成トレーニングにおける成人泌尿器科や腎臓外科との連携が必要である。現在、久保医師が成人泌尿器科に出向し、藤村教授のもとでロボット手術の訓練を受けている。また腎臓外科との実務連携については、尿路再建や小児腎移植の面で、今後さらに発展する予定である。

2007年の開設以来、小児泌尿器科として当科の専門独立性が担保されてきたため、国内外で有数と言われるレベルの小児泌尿器専門施設として発展できたと自負している。また泌尿器科専門医教育の面においては、上に述べたような関連診療科との緊密な連携が不可欠であり、その体制が整備されているのが当科の特長である。学閥のない自治医大でこそ可能な理想の診療、教育、研究体制と考えられ、今後も継続的に発展させたい。

3)当科対象疾患のあらまし

対象疾患の三つの柱は、乳幼児、小児の①腎尿路の先天異常、②性腺生殖器疾患、③尿失禁を含む排泄障害 で、先天性疾患が多い。成人期への移行症例で手術が必要な場合は、子ども医療センター外来を受診し、大学病院病棟に入院、子ども医療センターにて手術を行う。

全身性多発奇形症候群の一部分症としての腎尿路生殖器の先天異常も多く認め、関連各科とのチーム診療が不可欠である。また、専門施設が追うべき任務として、他院での治療困難例、中断例に追加して治療を完了させることもしばしばある。

・専門医

日本泌尿器科学会認定専門医・指導医 守屋 仁彦
中村  繁
日向 泰樹
日本泌尿器科学会認定専門医 田辺 和也
日本小児泌尿器科学会認定医 守屋 仁彦
中村  繁
日向 泰樹

3.診療実績・クリニカルインディケーター

1)新来患者数・再来患者数・紹介率

新来患者数 358人
再来患者数 4,791人
紹介率 89.4%

2)入院患者数

133人

3)全手術件数

169件

3-1)手術症例病名別件数

先天性水腎症 4
膀胱尿管逆流症 10
停留精巣 66
尿道下裂 31
陰嚢水腫 8
合計 119

3-2)手術式別件数

腎盂形成術(後腹膜鏡補助下) 4
腎摘出術(後腹膜鏡下) 3
膀胱尿管新吻合術 5
内視鏡的逆流防止術 5
停留精巣固定術
  腹腔内以外 62
  腹腔鏡下 1
尿道下裂形成術 29
女児外陰形成術 1

4)主な処置・検査

排尿時膀胱尿道造影、尿流動態検査(ウロダイナミクス)、膀胱尿道内視鏡検査、核医学検査、超音波検査

5)カンファレンス症例

  • 外来患者・手術患者カンファレンス(火曜)
  • 小児画像カンファランス(火曜)
  • 二分脊椎カンファレンス(月1回水曜)
  • 栃木小児泌尿器科症例カンファレンス(TPUCC)(不定期)

6)キャンサーボード

小児血液腫瘍グループ、小児外科、小児診断部などと合同で、年2~3回開催。

4.2022年の目標・事業計画等

  1. 新世代の自治医大小児泌尿器科チームの構築

    これまでの当科の得意治療分野を充実させるとともに、今後ロボットを含む低侵襲手術を小児泌尿器科領域で発展させる。

  2. 腎泌尿器外科講座内での若手中堅人材の横断的活用
  3. 円滑なトランジションのための成人泌尿器科や成人婦人科との診療連携
  4. 国際的な発信力の強化
  5. 競争的資金の獲得

5.過去実績