腫瘍センター【アニュアルレポート】
1.スタッフ(2022年4月1日現在)
腫瘍センター長 | 臨床腫瘍科 教授 | 山口 博紀 |
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運営委員会委員 | (各がん診療科)、看護部、薬剤部、医学部大学院、看護学部、患者サポートセンター、事務 |
2.診療部の特徴
自治医科大学の中で、院内のがん医療を横断的に統括し発展させ、多方面にわたるがん医療を安全かつ効率的に提供することを目的として発足し、がん対策基本法に則ってがん医療に取り組む中心的な存在である。がんを担当している診療科や部署の参加だけではなく、院内から周辺地域、全国にわたるがん診療の均てん化を目指すもので、「放射線治療」、「化学療法」、「集学的治療」、「緩和ケア」、「がん登録」、「がん相談」、「がん教育」、「がん研究」、「がん診療連携」「がんゲノム医療部」の作業部会を設置し活動している。
放射線治療は低侵襲治療として注目されているが、整備・普及が遅れており、当院でも増え続ける患者に対応すべく地域連携の体制整備を進めている。緻密な照射計画が必要となる強度変調放射線治療(IMRT)も増加しており、高度な放射線治療を進めている。また治療説明や患者教育に関する充実を図っている。
化学療法は外来治療センターでの外来化学療法を進めており年間12,000件を越える経静脈的な投与を安全かつ快適に効率よく提供していくことに努めている。看護師外来、薬剤師外来、こころのケア外来、臨床心理師外来を整備しており、より安全性を高め、精神面を含めた個別な対応の向上を目指している。
診療科横断的な集学的治療を円滑に行うため毎月Cancer Board Conference を行い、院内におけるがん医療に対する意識と知識の標準化をすすめている。
緩和ケアは緩和ケア科を主体として活動しており、精神腫瘍部、さらには公認心理師とも連携しながら、がん患者のニーズに合ったより高いレベルの緩和医療を診断早期から関与して提供している。
がん登録は精度の高い情報をほぼ全例に実施できる体制が完成している。今後予後調査との連結により当院のがん診療の実態を把握し、周辺地域の医療対策の検討に向け、行政を巻き込んだ対策立案を目指している。
がん患者・家族の持ついろいろな悩みごとのがん相談をがん相談支援センターにて行っている。セカンドオピニオンにも積極的に対応し、多様なニーズに応えている。また、患者・家族のためのがんサロン「虹」を月1回実施しており、患者・家族目線での医療情報提供を行っていたが、今年度は新型コロナウイルス感染症の影響でWeb上の動画配信形式で3回開催した。
がんに対する教育体制の分野では、文部科学省「がんプロフェッショナル養成プラン」を基に、平成29年度からの第III期にあたる「多様な新ニーズに対応するがん専門人材(がんプロフェッショナル)養成プラン」が行われ、2020年3月で終了した。今後5年間、引き続き本学は「全人的なライフステージに応じたがん医療の実践者養成」をテーマにがん教育活動を継続する予定である。医学部大学院を中心として、大学院生だけでなく、学部生、研修医、院内職員、地域の医療者をも含んだ多職種へのがん教育を行っている。また、がん医療の空白地帯に関する研究を進めているところである。がんプロ市民公開講座は実地開催をやめ、がんプロニュースレターの形で、これまでの市民公開講座参加者503名に送付し、昨年度に引き続きがんゲノム医療についての情報提供を行った。
現在の治療は臨床研究の結果を基にしたエビデンスによって行われており、大学病院はこれを利用するだけでなく新たなエビデンスを構築する立場でなければならない。とちぎ臨床試験推進部や臨床研究支援センターと連携し、がん領域における新規薬剤の開発治験や院内臨床試験実施体制の整備と実施を進めている。
超高齢化社会を迎え、がん患者の増加が予想される一方、それを支える人口の減少が認められてきており、医療と生活を考慮した地域医療体制の整備が急務である。そのためには医療機関間における情報共有が重要であり、その手段として栃木県ではとちまるネット、どこでも連絡帳の利用が推進されている。これらを利用した連携体制を整備しつつあり、がん診療を将来の地域包括ケアシステムに加えた形での展開を目指している。
がんゲノム医療における遺伝子パネル検査は2019年6月に保険診療下に開始された。当院においても円滑に遺伝子パネル検査を提供できるよう、がんゲノム医療部が院内運用マニュアルを作成し、院内運用を行っている。2021年3月には血液検体にて遺伝子パネル検査を行うFoundation One CDx Liquid が保険診療科に実施可能となり、これに対応できるよう院内運用体制を整備した。これまでに約90例の遺伝子パネル検査が行われた。
3.実績・クリニカルインディケーター
腫瘍センター運営委員会にて各作業部会の活動目標を設定し、進捗状況を報告している。
がん診療連携拠点病院としての機能の充実を計るため、『がん診療体制の質評価調査』に参加している。
4.2022年の目標・事業計画等
- 腫瘍学教育の更なる推進
がんプロ地域がん総合医学コース・インテンシブコースの推進 - 外来がん化学療法の充実
増加する外来治療センター治療症例への対応 - 放射線治療の推進と施設整備
施設整備 - 緩和ケア教育の推進
緩和ケアマニュアルの改訂 - 小児がんへの対応体制の整備
支援体制整備 - がん臨床研究実施体制の推進
臨床研究・治験の推進 - がん診療のQIを通じた医療の質向上
医療の質評価を元にしたPDCAサイクルの実施 - とちまるネット、どこでも連絡帳を軸とした地域医
療機関との連携推進
院内実施の推進 - 一般市民へのがん診療に対する啓発
がんサロンのWeb開催