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成人先天性心疾患センター(Adult Congenital Heart Disease Center)【アニュアルレポート】

1.スタッフ(2022年4月1日現在)

センター長 准教授(兼) 甲谷 友幸
循環器センター(内科部門)
医員 教授(兼) 苅尾 七臣
循環器センター(内科部門)
新保 昌久
循環器センター(内科部門)
今井  靖
臨床薬理センター・循環器センター(内科部門)
川人 宏次
循環器センター(外科部門)
岡  徳彦
とちぎ子ども医療センター小児・先天性心臓血管外科
学内教授(兼) 星出  聡
循環器センター(内科部門)
相澤  啓
循環器センター(外科部門)
准教授(兼) 船山  大
循環器センター(内科部門)
齋藤  力
循環器センター(外科部門)
学内准教授(兼) 大木 伸一
循環器センター(外科部門)
講師(兼) 渡部 智紀
循環器センター(内科部門)
佐藤 智幸
とちぎ子ども医療センター小児科
関   満
とちぎ子ども医療センター小児科
松原 大輔
とちぎ子ども医療センター小児科
友保 貴博
とちぎ子ども医療センター小児・先天性心臓血管外科
助教(兼) 清水 勇人
循環器センター(内科部門)
井上 崇道
とちぎ子ども医療センター小児・先天性心臓血管外科
病院助教(兼) 久保田香菜
循環器センター(内科部門)

2.成人先天性心疾患センターの特徴

近年の小児循環器診療の向上に伴い、手術後に成人期に到達する患者数は著明に増加している。日本胸部外科学会の集計では毎年9700~10000人の先天性心疾患に対する手術が行われ、生存率は概ね95%を越える状況となって言える。このため成人期に至る先天性疾患患者数は毎年9000人程度増加することが予想され、これらの中でいわゆる重症疾患患者の比率が増加している。「こうした新たな患者の診療をどこで、誰が担当するか?」との命題が大きな問題となっている。これに対し当院では平成20年(2008)4月、小児・先天性心臓血管外科(小児心臓血管外科から改称)、小児科(循環器グループ)、循環器内科、(成人)心臓血管外科を中心とした"機能的"診療部門(特殊有床診療部門)として北関東地域では初の「成人先天性心疾患センター」が開設され、全国大学病院循環器内科を中心として平成23年(2011)に設立された「先天性心疾患対策委員会(循環器内科ネットワーク、永井良三委員長(現、本学学長))」の創設期から参加してきた。通常の外来診療は従来通りの担当科で行い、問題点が発生したり、成人期の手術やカテーテル治療、あるいは小児期手術後や未治療で成人期まで到達した患者がしばしば遭遇する心不全や不整脈、ペースメーカの問題などの後遺症(合併症・遺残症・続発症)を生じた場合などの対応を行い、あるいは先天性心疾患女性患者で妊娠・出産を希望される場合など専門の領域だけでなく各部門間の連携により「よりよい・安全な」医療の提供を目指すことを目的としている。

従来「根治術」と称された小児期の手術後に続発症などの後遺症で再手術を要する例の存在に対する認識も徐々に定着し、その数も増加している。また新たな問題点の出現に対して「根治術後であるため、これ以上の対応はない」とそのまま経過観察となっている例の存在も徐々に明らかとなっている。

こうした患者の年齢、現在の病状の内容や必要としている医療の内容などから新館6F循環器センターの病床を入院病床とし、必要な検査や治療などの計画を立て、有機的に診療を進める。医師だけでなく看護師や臨床工学技士についても専門性の高い活動を目指している。手術では初回手術だけでなく、再手術についても多くは小児・先天性心臓血管外科での対応となっているが、今後、冠状動脈病変、大血管病変、弁膜病変などが増加すると(成人)心臓血管外科部門の役割が増加すると予想され、血管内治療などの対象例も増えることが予想される。不整脈でも正常心と大きく異なる基礎疾患による形態や特殊な部位・走行を示す刺激伝導系、小児期手術の影響などを考慮した高度なカテーテル検査や治療を必要とされる機会が増加する。さらに単心室などでの心不全に対する治療では従来行われていなかった心臓再同期治療(CRT)なども導入が予定されている。各種単心室に対する機能的修復術であるFontan/TCPC手術後の不整脈や心不全では従来と大きく異なる治療手段の選択や管理方法が必要とされる。またEisenmenger症候群や高度な肺高血圧の残存した例に対する薬剤を中心とした治療や外科治療を併用した新たな治療方法(Treat & RepairあるいはRepair & Treatなど)の選択、可否の判定のための開胸肺生検なども院外専門施設と協働して進める必要がある。

平成24年(2012)認定・導入された(北関東地域で初、唯一の施設)動脈管開存・心房中隔欠損に対するカテーテル治療は着実に実施数が増加し(毎年30例前後)、成人先天性心疾患センター内での適応や効果判定の可視化の効果もあり安全に実施でき、良好な結果を得ている。こうした治療は一部の患者では大きな手術をしないで、短期間の入院のみで治療ができる機会を提供でき、成人例での早期職場復帰などの面で期待され、今後成人大動脈疾患や大動脈弁疾患に対する血管内治療(EVAR/TEVARやTAVIなど)と同様患者数の増加が予想される。またその適応についても小児科・循環器内科・および小児・先天性心臓血管外科で充分な検討を行い、安全な実施に留意している。

当施設は成人先天性心疾患の専門的診療が可能とされる全国48施設(令和3年1月現在)のひとつとして、その初期から診療体制整備に着手し、特に北関東圏での中核としての重要な役割が期待されている。院内の診療体制整備だけでなく、県内での成人先天性心疾患・肺高血圧についての啓蒙・教育・連携強化を目指すカンファレンス・セミナー・講演会などの企画・運営に着手している。

3.実績・クリニカルインディケーター

*循環器内科、(成人)心臓血管外科、小児科、小児・先天性心臓血管外科の当該項目を参照

  1. 手術:心臓血管外科、小児・先天性心臓血管外科の項目を参照
  2. カテーテルアブレーション:循環器内科の項目を参照
  3. ペースメーカ・ICD植込み:循環器内科、小児・先天性心臓血管外科の項目を参照
  4. PCPS・ECMO・VAD:循環器内科、(成人)心臓血管外科、小児・先天性心臓血管外科の項目を参照
  5. 主な検査

    (1)心エコー検査:
    ①経胸壁心エコー検査(TTE)
    ②経食道心エコー検査(TEE)(術中、心房中隔欠損に対するカテーテル治療などでは適応決定なども含めて不可欠となっている)
    ③心腔内エコー検査(ICE)
    *3Dエコー検査も含めて弁膜病変や心房中隔欠損に対するカテーテル治療例、不整脈に対するカテーテル治療例を中心に増加している。

    (2)心カテーテル検査(不整脈に対する電気生理学的検査も含む):
    循環器内科、小児科の項目を参照

    (3)肺生検:院外施設(東北大学心臓血管外科)の協力を得て、肺高血圧例を中心に実施(主に術中に採取):
    小児・先天性心臓血管外科の項目を参照

    (4)造影CT/3D-CT検査:複雑な立体構造、先行した手術による構築の変化、再手術前の胸骨下の癒着や胸骨再切開時の危険性の予知による危険の回避、大腿動脈/静脈や上下大静脈などの情報は心エコー検査の精度に制限を生じる成人例・先行手術既往例ではさらに有用性が高まる。

    (5)MRI(Cardiac MRI:CMR):
    複雑な構造の評価だけでなく血流評価、先行手術による心筋変性や心膜肥厚・癒着などの機能的情報に優れ、心エコー検査や心カテーテル検査での精度に問題があった右室・右心系の評価に適している。放射線被ばくがなく繰り返して検査が可能であり、成人期の経時的評価に適する。今後増加、頻用が期待され、放射線技師などの育成も必要となる。

    (6)3D-printingモデル作製:
    複合心疾患に対する心内修復術例などで術式選択の困難な例や極めてまれな疾患例などでCT検査画像データから小児科・放射線技師の協力を得て作製

    (7)運動機能検査:運動負荷試験(CPX):
    循環器内科の項目を参照など

4.2022年の目標・事業計画等

小児科から循環器内科への適切な移行も積極的に進め、年齢の変化による受診部署の変化(小児科から循環器内科へ)のために適切な診療から逸脱する患者のないように留意していく。さまざまな症候群や発達障害などを有する例での診療では子ども医療センターでの診療を中心として小児・成人両面での協同的な診療体制の構築を目指す。また心エコー検査・CT検査・MRI検査などを中心とする良質な形態と同時に機能も評価する画像診断や治療方針の決定を進め、さらに今後増加が見込まれる妊娠・出産希望例についても積極的に産科やNICU、麻酔科などとも連携を進めることを予定している。担当科の得意分野、専門分野の特徴を活かした不整脈や心不全、肺高血圧などに対する高度な診療を進める。さらに学内での診療活動にとどまらず、成人先天性心疾患総合修練施設として良質な病診連携・病病連携の促進や教育活動、医師・看護師・各種技師などの人材育成、各種啓蒙活動なども需要な課題と位置付けている。

2022年中の新たな事業計画として、1)卵円孔開存(PFO)に対する施設認定を受ける準備を進める。2)門脈肺高血圧症:portopulmonary hypertension (POPH)の診断、治療について消化器内科と連携して進めていく。また、近年中にファロー四徴修復術後の肺動脈弁逆流などに対する(大動脈弁疾患に対するTAVIと同様)経カテーテル的肺動脈弁置換(挿入)が国内導入・認可される予定となっている。

過去実績