血液科[アニュアルレポート] | 病院のご案内 | 自治医科大学附属病院
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血液科【アニュアルレポート】

1.スタッフ(2021年4月1日現在)

科長 (教授) 神田 善伸
医局長 (准教授) 大嶺  謙
外来医長 (学内講師) 蘆澤 正弘
病棟医長 (講師) 山本 千裕
医員 (教授) 藤原慎一郎(兼)
大森  司(兼)
(講師) 佐藤 一也
畑野かおる
外島 正樹(兼)
上田 真寿(兼)
(助教) 森田  薫
中野 裕史
(病院助教) 山崎 諒子(派遣)
皆方 大佑
伊藤 祥子
シニアレジデント   7名(派遣2名)
大学院生   4名

2.診療科の特徴

北関東における血液疾患診療の数少ない拠点病院として、地域と連携しながら血液疾患全般の診断と治療をおこなっている。世界標準治療の安全な遂行は言うまでもなく、再発・難治性造血器腫瘍に対しても分子標的治療薬や遺伝子細胞治療、造血幹細胞移植を駆使して治療成績の向上に努めている。加えて、新たなエビデンス創出を目指し、数多くの臨床研究を主導的に実施するとともに、多施設共同臨床試験や新薬の開発治験にも積極的に参加している。更に、遺伝子細胞治療を中心とした先端医療の研究開発にも取り組んでいる。特に、キメラ抗原受容体遺伝子発現T細胞を用いた、多発性骨髄腫に対する治療、および急性リンパ芽性白血病に対する治療は革新的なものである。

当科の最大の特徴として造血幹細胞移植療法に積極的に取り組んでいる点が挙げられる。移植治療の実績は国内トップクラスであり、本学や近隣の施設ばかりでなく全国からの紹介患者にも広く対応している。血液診療に精通した薬剤師、看護師、検査技師、臨床心理士、理学療法士、栄養士も診療に積極的に参加することにより多面的な患者サポートが可能な体制となっている。

検査部門においてはフローサイトメトリー解析や染色体解析、白血病キメラ遺伝子解析を院内でおこなうことが可能である。造血器腫瘍の診断から治療まで迅速に対応可能な体制が整っている。稀な疾患である、血栓・出血性疾患についてもエキスパートが診療に関わり精密な治療が可能である。

また、造血幹細胞移植の臨床における問題点に立脚した基礎研究をおこなっている。高度免疫不全マウスを用いた移植片対宿主病モデルや白血病モデルを作製し発症のメカニズム解析や治療実験をおこなっている。

認定施設

  • 日本血液学会認定研修施設
  • 日本輸血細胞治療学会認定教育施設
  • 日本造血細胞移植学会認定施設
  • 日本臨床腫瘍学会認定研修施設
  • 日本がん治療認定医機構認定研修施設
  • 日本血栓止血学会認定施設(令和3年4月〜)

認定医

日本血液学会専門医 11名
日本血液学会指導医 6名
日本内科学会認定医 17名
日本内科学会総合内科専門医 9名
日本内科学会指導医 9名
日本輸血・細胞治療学会認定医 1名
日本がん治療認定医 1名
日本がん治療暫定教育医 1名
日本造血細胞移植学会認定医 4名
日本臨床腫瘍学会暫定指導医 1名

3.診療実績・クリニカルインディケーター

1)新来患者・再来患者数・紹介率

新来患者数 400人
再来患者数 15,035人
紹介率 87.7%

2)入院患者数(病名別のべ人数)

病名 患者数
急性骨髄性白血病 108
急性リンパ芽球性白血病 95
ホジキンリンパ腫 6
非ホジキンリンパ腫 164
慢性リンパ球性白血病 4
成人T細胞性白血病 16
多発性骨髄腫 35
アミロイドーシス 7
慢性骨髄性白血病 13
再生不良性貧血 13
骨随異形成症候群 20
慢性骨髄単球性白血病 2
特発性血小板減少性紫斑病 7
血友病 2
造血幹細胞移植ドナー 23
その他 24
合計 539

3)手術症例病名別件数

病名 人数
骨髄採取術 9人
末梢血幹細胞採取術 59回/46人

4)治療成績

急性骨髄性白血病初回寛解率 91%
急性リンパ球性白血病初回寛解率 89%
びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫
初回R-CHOP療法寛解率
77%

5)主な検査・処置数

骨髄穿刺 1,068件
骨髄生検 293件
染色体分析検査 1,194件
院内診断 490件
細胞表面抗原解析 1,609件

6)キャンサーボード

担当医師の他、看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士、歯科衛生士が参加する移植患者カンファレンスを毎週月曜日に行っている。

2019年の入院患者のべ人数は496名に対し、2020年は539名と増加がみられた。外来診療においては87.7%の高い紹介率を維持し、地域医療機関との連携・機能分化に貢献している。白血病およびリンパ腫の初回治療の寛解率は、77〜91%であり全国の主要施設における治療成績と比較して、遜色ない診療レベルが維持されている。2020年10月からは末梢留置型中心静脈注射用カテーテル(PICC)挿入認定看護師2名が活動を始め、医師の業務負担の軽減、チーム医療の推進に貢献している。

2020年2月に外来治療センターに8床が増床され、計37床となった。また、2020年12月には同センター予約システムが改良され、より効率的に化学療法を遂行することが可能となった。

地域との医療連携については、栃木県立がんセンター、那須赤十字病院、及び芳賀赤十字病院へ計3名の常勤医師の派遣を継続することで宇都宮地区、栃木県北部、芳賀地区の血液内科診療体制の維持に貢献した。

教育施設として、将来地域を支える医学生、看護学生、研修医の育成に積極的に取り組んでいる。2017年からは看護師特定行為研修も開始し、2020年は県内外から7名のPICC挿入研修者を受け入れた。

23の企業治験、10件の遺伝子解析研究、34件の医師主導多施設共同臨床研究が遂行され、先端的医療や研究への積極的な取り組みがなされた。

以下に遂行中の企業治験、遺伝子解析研究、医師主導多施設共同臨床研究を紹介する。

企業治験

  1. 未治療の進行期低悪性度非ホジキンリンパ腫患者を対象としたGA101(RO5072759)+ 化学療法併用後の奏効例に対してGA101維持療法を施行する群とリツキシマブ+化学療法併用後の奏効例に対してリツキシマブ維持療法を施行する群の有用性を評価する第Ⅲ相多施設共同非盲検 ランダム化試験
  2. FLT3遺伝子変異を有する再発又は治療抵抗性の急性骨髄性白血病(AML)患者を対象としたASP2215とサルベージ化学療法の多施設共同非盲検ランダム化比較第Ⅲ相試験
  3. 再発又は難治性のCD19陽性B細胞性急性リンパ芽球性白血病患者を対象としたTBI-1501の多施設共同第I/Ⅱ相臨床試験
  4. 初回寛解を達成した寛解導入・地固め療法後のFLT3-ITD遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病(AML)における維持療法としてのASP2215の多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ 相試験
  5. FLT3-ITD遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病を対象とした同種造血幹細胞移植後の維持療法におけるASP2215の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相試験
  6. 対象疾患:未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)治験薬:Polatuzumab Vedotin Anti-CD79bADC(Antibody Drug Conjugate 抗体-薬物複合体)
  7. 日本人深在性真菌症に対するAK1820の第Ⅲ相試験 -AK1820の安全性および有効性を評価する、多施設共同、非盲検試験-
  8. FLT3変異を伴う初発急性骨髄性白血病(AML)患者を対象に、midostaurinを1日2回の経口投与にて、ダウノルビシン/シタラビンによる寛解導入療法及び高用量シタラビンによる地固め療法としてmidostaurinとの併用投与、並びに継続療法としてmidostaurin単剤投与した場合の有効性及び安全性を評価するアジア及びロシア、第Ⅱ相、ランダム化、二重盲検、多施設共同、プラセボ対照試験
  9. FLT3変異陰性の初発急性骨髄性白血病(AML)患者を対象に、ダウノルビシン又はイダルビシンとシタラビンによる寛解導入療法及び中間用量シタラビンによる地固め療法をMidostaurin又はプラセボと併用する第Ⅲ 相、ランダム化、二重盲検試験
  10. 再発又は難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者を対象としたポラツズマブ ベドチン(RO5541077)とリツキシマブ+ベンダムスチン併用療法の第Ⅱ相臨床試験
  11. 再発及び難治性の多発性骨髄腫患者に対するBB2121の有効性及び安全性を検討する第2相多施設共同試験
  12. 遺伝子改変T細胞を投与された被験者の長期追跡調査
  13. 同種造血幹細胞移植を受ける患者の腸管急性移植片対宿主病予防におけるベドリズマブの有効性及び安全性を評価する、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同試験
  14. サイトメガロウイルス(CMV)抗体陽性(R+)の同種造血幹細胞移植(HSCT)患者へのMK-8228(レテルモビル)予防投与を移植後100日から200日に延長した際の安全性及び有効性を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照第Ⅲ相試験
  15. 進行期B細胞性腫瘍の日本人成人患者を対象とした、選択的かつ不可逆的なブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬acalabrutinibの安全性、忍容性、薬物動態、及び抗腫瘍効果を検討する第Ⅰ相試験
  16. 免疫抑制療法未治療の再生不良性貧血患者を対象としたAMG531のシクロスポリンA併用第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験
  17. 未治療の急性骨髄性白血病患者を対象とした寛解導入療法及び地固め療法とのASP2215併用第Ⅰ/Ⅱ相試験
  18. 同種幹細胞移植後の急性骨髄性白血病患者を対象としてベネトクラクスとアザシチジンの併用投与の安全性及び有効性を評価する無作為化、非盲検第Ⅲ相試験(VIALE-T)
  19. 成人の一次性免疫性血小板減少症患者を対象としてefgartigimod(ARGX-113)10mg/kg静脈内投与の有効性及び安全性を評価する多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相臨床試験
  20. 成人の一次性免疫性血小板減少症患者を対象としてefgartigimod(ARGX-113)10mg/kg静脈内投与の安全性及び有効性を評価する多施設共同非盲検長期第Ⅲ相試験
  21. 中等症以上の日本人再生不良性貧血患者にPF-06462700を40MG/KG/日、4日間静脈内投与したときの有効性および安全性を評価する多施設共同、非盲検、単群試験
  22. 従来の化学療法後の第一寛解期にある急性骨髄性白血病患者の維持療法としてのベネトクラクス+アザシチジンをベストサポーティブケアと比較する無作為化、非盲検、2群、多施設共同、第Ⅲ相試験(VIALE-M)
  23. 再発・難治性低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)患者を対象とするME-401の第Ⅱ相臨床試験

遺伝子解析研究

  1. 成人フィラデルフィア染色体陰性未熟B細胞性急性リンパ性白血病に対する多剤併用化学療法による第Ⅱ相臨床試験
  2. 成人precursor T細胞性急性リンパ性白血病に対する多剤併用化学療法による第Ⅱ相臨床試験
  3. 急性骨髄性白血病における予後規定因子となる遺伝子変異の探索
  4. 国内外の先天性および後天性の血友病を含む出血性疾患の調査研究
  5. B細胞性白血病・リンパ腫に対する免疫遺伝子療法の開発研究
  6. 造血器腫瘍及び固形腫瘍におけるゲノムおよびエピゲノム異常の網羅的解析
  7. 家族性血小板異常症の遺伝子解析研究
  8. 網羅的遺伝子解析を用いた骨髄増殖性腫瘍の病態解明と診断治療法の開発
  9. CD19特異的キメラ抗原受容体発現Tリンパ球を用いた再発・難治性B細胞性悪性リンパ腫に対する遺伝子治療臨床研究の継続調査
  10. 新しい補体検査システムの構築による補体関連疾患の包括的登録と治療指針確立

臨床研究

  1. 血液疾患患者における全身化学療法および放射線照射後の抗ミュラー管ホルモンを用いた妊孕性温存の評価に対する前方視的研究
  2. 同種造血幹細胞移植後早期における高ビリルビン血症とSinusoidal obstruction syndrome の関連性についての後方視的検討
  3. 急性白血病・骨髄異形成症候群における腫瘍と腫瘍微小環境の解明
  4. 造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病における同種抗体産生機序の解明
  5. 腫瘍微小環境が造血器腫瘍(悪性リンパ腫、多発性骨髄腫)に与える影響の解明
  6. 成人フィラデルフィア染色体陰性未熟B細胞性急性リンバ性白血病に対する多剤併用化学療法による第Ⅱ相臨床試験
  7. 成人precursor T細胞性急性リンパ性白血病に対する多剤併用化学療法による第Ⅱ相臨床試験(JALSG T-ALL213-0)
  8. PNHレジストリ(発作性夜間ヘモグロビン尿症患者登録)
  9. 日本成人白血病共同研究グループ(JALSG)参加施設に新たに発生する全急性骨髄性白血病、全骨髄異形成症候群、全慢性骨髄単球性白血病症例を対象とした5年生存率に関する観察研究(前向き臨床観察研究)
  10. 研究参加施設に新たに発生する全ての急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia, ALL)症例を対象とした5年生存率に関する前向き臨床観察研究: JALSG ALL Clinical Observation Study 12 (JALSG-ALL-CS-12)
  11. 難治性濾胞性リンパ腫に対するbendamustineを併用した前処置による同種造血幹細胞移植療法の安全性と有効性の検討(第1/2相試験)
  12. ヒト異種移植片対宿主病モデルを用いたヒト骨髄由来間葉系幹細胞の治療効果と作用機序の検討
  13. 造血幹細胞移植におけるT細胞代謝の解析
  14. ヒト異種移植片対宿主病モデルを用いた既知及び新規の薬物・細胞療法の評価
  15. 再発・治療抵抗性の若年者悪性リンパ腫に対するESHAP療法とDHAP療法の有効性と安全性の比較検討
  16. 急性骨髄性白血病における50-64歳に対するJALSGAML201と65歳以上に対するJALSGGML200の有効性と安全性の比較検討
  17. アプレピタントによるデキサメサゾンの作用増強効果の検討
  18. HBV既往感染歴を有する同種造血細胞移植レシピエントに対する、HBワクチンによるHBV再活性化予防法のランダム化検証的試験(PREVENT HBV)
  19. ホジキンリンパ腫に対する同種移植前後のPD-1阻害薬投与の安全性に関する全国調査
  20. 同種造血幹細胞移植におけるタクロリムス1日1回投与製剤の有効性および安全性の検討
  21. 同種造血幹細胞移植後患者の就労に関する実態調査
  22. 臍帯血移植後のEBウイルス再活性化・再感染の病態解明と予防法・治療法の確立
  23. 造血細胞移植医療の全国調査  関東造血幹細胞移植共同研究グループ(KSGCT)移植患者データベース作成調査研究
  24. 同種造血幹細胞移植後の好中球回復の違いが移植後合併症や予後に与える影響についての検討
  25. 65歳以下自家造血幹細胞移植後再発多発性骨髄腫に対するボルテゾミブおよびレナリドミドによる再寛解療法と維持療法、および自家・同種造血幹細胞移植による再発後治療の有効性と安全性の検討
    Tergeting Complete Response in Younger transplant-eligible Multiple myeloma patients with Bortezomib and Lenalidomide treatment after relapse with autologuous stem cell trasplantation (CYMBAL study)
  26. 急性骨髄性白血病地固め治療における高用量キロサイド療法と多剤併用治療の比較
  27. 多発性骨髄腫に対する自家末梢血幹細胞移植前後のM蛋白減少率が予後に及ぼす影響について(当院の自家移植症例についての後方視的解析)
  28. 慢性移植片対宿主病における同種抗体・自己抗体の産生機構の解明
  29. 標準リスク進行期造血器疾患に対する低容量アレムツズマブ併用HLA不適合同種造血幹細胞移植の有効性の検討
  30. 高リスク進行期造血器疾患に対する移植後免疫抑制剤投与量を調整した低容量アレムツズマブ併用HLA不適合同種造血幹細胞移植の安全性と有効性の検討
  31. 造血器腫瘍患者を対象にしたHLA 1座不適合非血縁者間骨髄移植における従来型GVHD予防法と抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン併用GVHD予防法の無作為割付比較試験
  32. 同種造血幹細胞移植後のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に対するダサチニブを用いた維持療法の有効性の検討 KSGCT1601(DASALL Ⅱ)
  33. 未治療症候性多発性骨髄腫に対するボルテゾミブ、シクロホスファミド、デキサメタゾンによる導入療法、自家末梢血幹細胞移植療法およびレナリドミドによる地固め療法・維持療法に関する有効性と安全性の検討
  34. 初発フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に対するダサチニブ併用化学療法と同種造血幹細胞移植を行う前向き多施設共同臨床第Ⅱ相試験

4.2021年の目標・事業計画等

4階南病棟の8床、4階西病棟に16床の無菌病床が稼働している。これらを効率よく利用し、地域から診療依頼が増加している急性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫に代表される難治性造血器腫瘍に対して、造血幹細胞移植療法を円滑に遂行する。

地域における円滑な血液内科診療の遂行を目的に上述の関連施設への常勤医派遣を継続する。2021年春には新小山市民病院(栃木県小山市)および友愛記念病院(茨城県古河市)に、新たに血液内科専門医が常勤となる予定であり、栃木県県南部、茨城県県西部医における血液疾患の診療体制の充実が見込まれる。両施設とは、これまで以上に連携を強化し、化学療法を必要とするケースに迅速に対応する。

来年度も引き続き新規治療薬、及び新規治療法の研究開発に積極的に参加する。

5.過去実績