救命救急センター【アニュアルレポート】
1.スタッフ(2022年4月1日現在)
センター長 | (教授) | 間藤 卓 |
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副センター長 | (学内教授) | 米川 力 |
外来医長 | (准教授) | 伊澤 祥光 |
病棟医長 | (学内教授) | 米川 力 |
医員 | (学内准教授) | 松村 福広 |
(助教) | 新庄 貴文 | |
(病院助教) | 田中 保平 | |
シニアレジデント | 11名 |
2.救命救急センターの特徴
自治医科大学救命救急センターは2002年9月1日に県内5番目の救命救急センターとして認可された。救命救急センターではあるが、その立地条件やこれまでの経験から、救命救急センターのスタッフだけではなく、内科系、外科系のセンター当直体制とのハイブリッド体制により救急患者を診療する体制を作り、救急要請を極力拒否することなく、地域の基幹病院としての役割を果たしながら救命救急センターの運営を目指していることが特徴で、中央部門として運営されており救命救急センター運営委員会がその内容をチェックする機構になっている。
夜間休日の診療は、救命救急センタースタッフ1~2名を2022年度からは常時2名体制とし、それに加えて外科系・内科系の救命センター当直、さらにレジデントが共に救急患者の窓口として当直勤務している。三次要請と、患者の重症度・緊急度に応じて救命救急センターのスタッフが必要と判断した二次要請については、救命救急センタースタッフが主に対応している。またその他の患者は内科・外科センター当直が対応することとなっている。そのほかに外科、整形外科、脳外科、麻酔科などは常時夜勤・当直医がおかれ、その他の科も当直・宅直混合体制により、夜間休日といえども高度な医療を提供できる体制を目指している。
救命救急センターへの救急患者の集中は全国的な傾向である。患者の大病院志向、一次救急を診る診療所の減少、二次救急施設の疲弊、などいろいろな理由が考えられているが、残念ながら本来の大学病院、本来の救命救急センターとしての機能が十分に発揮できないところまで来てしまっている。最近は救急車の集中や手術室の空き状況などにより、搬送依頼を断らざるを得ない状況が見られるようになってきている。これに対して自治医大としては、地域の医師会、二次医療機関、消防機関、行政との連携をはかり、メディカルコントロール(MC)体制を確立し、初期救急医療施設が周辺の医師会の主導で設立されるとともに、二次病院・三次医療機関へ適切な振り分けを推進し、その結果、軽症患者の減少、二次・三次医療機関がそれぞれ適切な役割が果たせるようになってきた。この流れが、最近の救急患者総数の減少、入院数の増加、軽症救急車搬送数の減少、そして入院率の増加につながって来ている。
しかしながら、2020年末からのCOVID-19大流行で、再び救急医療体制は混沌とした状況になりつつある。当初はCOVID-19患者の中等症、重症患者を診る病床が不足し、救命救急センターも病棟の一部を専用とせざるを得なかった。さらに2022年に入っては、二次病院のコロナ病床確保のあおりを受けて、県内の二次病院の救急医療体制が著しい機能低下を興し、その結果、三次要請以外に二次要請が救命救急センターに押し寄せるとんでもない状況となっている。
本来、救急医療は、一病院、一救命救急センターだけで行うものではなく、救命救急センター、二次医療機関、初期医療機関、救急搬送機関、医師会、行政、地域の住民が一体となってシステムとして作り上げるものであるが、COVID-19の大流行は、長年かけて築き上げてきたその体制を崩壊させようとしている。このような二次病院スルー問題、出口問題、感染・濃厚接触者による自宅待機などの多重の負荷が、今後どのように救命救急センターに影響するか予断を許さない状況である。
施設認定
- 日本救急医学会指導医認定施設
- 日本救急医学会専門医認定施設
- 日本外傷学会専門医認定施設
専門医
日本救急医学会専門医・指導医 | 間藤 卓 |
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米川 力 | |
日本救急医学会専門医 | 伊澤 祥光 |
新庄 貴文 | |
渡邊 伸貴 | |
日本集中治療医学会専門医 | 間藤 卓 |
日本外科学会専門医・指導医 | 伊澤 祥光 |
日本外科学会専門医 | 新庄 貴文 |
渡邊 伸貴 | |
日本外傷学会専門医 | 伊澤 祥光 |
日本腹部救急医学会認定医 | 伊澤 祥光 |
日本整形外科学会専門医 | 松村 福広 |
日本整形外科学会認定リウマチ医 | 松村 福広 |
日本整形外科学会認定脊椎脊髄医 | 松村 福広 |
日本整形外科学会認定スポーツ医 | 松村 福広 |
3.実績・クリニカルインディケーター
図に示すとおりで、救急患者数は過去10数年にわたって増加の一途であったが、この数年は横ばいから明らかに減少傾向になった。これはむしろ望ましいことであり、その取り組みについては、上記のとおりである。入院患者は、外傷(頭部外傷、胸部外傷、腹部外傷、四肢外傷、脊髄・脊髄損傷、多発外傷など)、熱傷、中毒(医薬品、農薬等)、内因性疾患(脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、血気胸、肺炎、消化管穿孔、敗血症、不明熱、肝膿瘍、イレウス、アナフィラキシー、ショック、蘇生後脳症など)、など多岐にわたっている。他の診療科と共同で診療に当たることも多く、救命救急センターから他科へ転科することも多い。
ただし2020年末からのCOVID-19大流行で、再び救急医療体制は混沌とした状況になりつつある。当初はCOVID-19患者の中等症、重症患者を診る病床が不足し、救命救急センターも病棟の一部を専用とせざるを得ず、救命救急センターとしての病室は最悪8床まで減少した。またコロナ患者が増加時は一般の救急患者は著しく、その端境期はその逆となるシーソー現象を繰り返したため、よってこれまでの統計・実績との比較は困難である。さらに2022年に入っては、二次病院のコロナ病床確保のあおりを受けて、県内の二次病院の救急医療体制が著しい機能低下を興し、その結果三次要請以外に二次要請が救命救急センターに押し寄せるとんでもない状況となっている。
なお、厚生労働省の救命救急センター評価においては、2018年県内唯一のS評価を取得した。
また平成22年1月12日よりドクターカーの運行を開始して実績を上げている。
国・県では、いわゆる救急車「たらい回し」(搬送困難事例)を減らすために、救急車搬送基準を策定し、平成22年から運用している。栃木全体では、重症以上の傷病者で病院選定に4回以上、あるいは現場滞在30分以上かかった搬送困難事例が、平成20年から26年まで7連続で全国平均を上回り、改善が急務であった。自治医科大学救命救急センターが管轄する小山・芳賀地区においては、このような状況を回避するために、地区の救急医療協議会や消防などと協議し、入院の必要な患者がたらい回しにならないように、他の病院で受け入れ難い場合には、重症度にかかわらず自治医科大学の救命救急センターでとりあえず引き受けるという方針を立てて搬送困難の削減に努めてきた。さらに平成24年からは搬送困難症例の全例検証を行い、これらの割合を全国平均以下に維持しているが、このような取り組みを全県的なものとするために栃木県MC協議会に働きかけをするなどの活動を行った結果、国が統計を取り始めてから初めて、現場滞在30分以上の搬送困難事例を県全体としても国の平均以下にすることができた。このような活動も自治医科大学救命救急センターの大きな役割である。
救急患者統計
H10 | H11 | H12 | H13 | H14 | |
---|---|---|---|---|---|
救急患者数(人) | 20,596 | 20,657 | 21,155 | 24,098 | 29,612 |
救急患者数 (即入院以外)(人) |
18,063 | 17,886 | 18,233 | 20,960 | 25,263 |
即入院患者数 (人) | 2,533 | 2,771 | 2,922 | 3,138 | 4,349 |
即入院率 (%) | 12.3 | 13.4 | 13.8 | 13.0 | 14.7 |
救急車搬送数 (件) | 1,824 | 2,170 | 2,351 | 2,798 | 4,490 |
H15 | H16 | H17 | H18 | H19 | |
---|---|---|---|---|---|
救急患者数(人) | 33,913 | 35,339 | 35,606 | 34,593 | 32,620 |
救急患者数 (即入院以外)(人) |
28,958 | 30,432 | 30,581 | 29,683 | 27,401 |
即入院患者数 (人) | 4,955 | 4,907 | 5,025 | 4,910 | 5,219 |
即入院率 (%) | 14.6 | 13.9 | 14.1 | 14.2 | 16.0 |
救急車搬送数 (件) | 5,158 | 5,136 | 4,970 | 4,649 | 4,515 |
H20 | H21 | H22 | H23 | H24 | |
---|---|---|---|---|---|
救急患者数(人) | 25,458 | 23,599 | 22,682 | 22,434 | 20,986 |
救急患者数 (即入院以外)(人) |
20,400 | 18,438 | 17,046 | 16,798 | 15,368 |
即入院患者数 (人) | 5,058 | 5,161 | 5,636 | 5,636 | 5,618 |
即入院率 (%) | 19.9 | 21.9 | 24.8 | 25.1 | 26.8 |
救急車搬送数 (件) | 4,383 | 4,563 | 5,225 | 5,577 | 5,573 |
H25 | H26 | H27 | H28 | H29 | |
---|---|---|---|---|---|
救急患者数(人) | 20,131 | 19,025 | 16,858 | 15,238 | 14,448 |
救急患者数 (即入院以外)(人) |
14,803 | 13,802 | 11,885 | 10,478 | 9,796 |
即入院患者数 (人) | 5,328 | 5,223 | 4,973 | 4,760 | 4,652 |
即入院率 (%) | 26.5 | 27.5 | 29.5 | 31.2 | 32.2 |
救急車搬送数 (件) | 4,953 | 4,912 | 4,489 | 4,327 | 4,351 |
H30 | R1 | R2 | R3 | |
---|---|---|---|---|
救急患者数(人) | 14,226 | 12,966 | 9,839 | 9,628 |
救急患者数 (即入院以外)(人) |
9,492 | 8,281 | 5,614 | 4,946 |
即入院患者数 (人) | 4,734 | 4,685 | 4,225 | 4,682 |
即入院率 (%) | 33.3 | 36.1 | 42.9 | 48.6 |
救急車搬送数 (件) | 3,941 | 3,818 | 3,450 | 3,625 |
注1)平成13年度までは、診療時間外に限った統計である。
注2)即入院患者数は、救急患者数の内数である。

4.2022年の目標・事業計画等
COVID-19の大流行により、新型コロナ対応に大きくリソースを割かざるを得ない状況であり、他方、これまで以上に二次・三次医療の要請が殺到している非常に舵取りの難しい状況となっている。
その中で2020年までに大きな増築・改築、救命外傷センターの整備などが終わっていたこと、ここ数年、救命救急センターの人気が上昇し、若手医師の入局が続いていたことは不幸中の幸いであった。
とはいえ、過大なストレス下で人は長く耐えられない、まずは救命救急センターが壊滅せず今後も存続すること、その為にはそこに働くスタッフの健康を守りモチベーションを維持することが一義と考える。
その上で、2023年に予定されているヘリポート整備などを粛々と進め、ウイズコロナ、アフターコロナ時代における救命救急センターを構築することが我々の使命と考えている。