健診センター[アニュアルレポート] | 病院のご案内 | 自治医科大学附属病院
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健診センター【アニュアルレポート】

1.スタッフ(2020年4月1日現在)

部長 (センター長・教授) 宮下  洋(循環器内科兼務)
医員 (病院講師) 三枝 充代(消化器内科兼務)
(助教) 島田 瑞穂
(病院助教) 光田 清佳(呼吸器外科兼務)
(病院助教) 宮原 晶子(消化器内科兼務)
(臨床助教) 志村名佳子
(臨床助教) 吉田 友直(消化器内科兼務)
非常勤医員 4名
看護師 12名(内 パート看護師7名)
保健師 2名
管理栄養士 1名
臨床検査技師 4名
超音波技師 4名(兼任)
診療放射線技師 26名(専任1名;交代26名)
事務職員 7名(内業務委託6名)

2.健診センターの特徴

総合健診(一日ドック)の専門施設として、以下の理念と5つの運営方針(2017年4月改訂)の下、健診業務を行っている:
理念:受診者満足を最優先し、健診・保健指導の質的向上をとおして人類全体の健康増進に貢献します。
運営方針:

  1. くつろげる環境と高品質な健診サービスを提供します。
  2. 自治医科大学附属病院と連携した精度の高い診断とフォローアップの充実に努めます。
  3. 科学的根拠に基づく疾患予防と健康増進を目指します。
  4. 高い知識と技術レベルの健診医療人材を育成します。
  5. 健診・予防医学研究による社会貢献に取り組みます。

A. 附属病院の診療とは独立した施設での最新鋭検査設備による健診サービスの提供

附属病院とは独立した建物(自治医科大学1号館)内にあり、落ち着いた雰囲気の中で健診を受けることができる総合健診(日帰り人間ドック)の専門施設である。健診内容は日本総合健診医学会および日本人間ドック学会の基準に準拠し、特定健康診査項目、労働安全衛生法による定期健診の必要項目およびがん検診に関する項目がすべて含まれ、加えて希望に応じたオプション検査を行っている。多様化する受診者の要望に対応できるよう、オプション検査を積極的に増やしていく方針で運営を行っている。

B. 附属病院の関連各専門診療科の協力による質の高い健診サービス

専門的な健診内容は、附属病院の産科婦人科(婦人科検診)、眼科(眼底画像読影)、循環器内科(心電図判読)、臨床検査部(腹部及び乳腺超音波判読)、病理診断部(子宮頸部および喀痰細胞診診断)、外科(マンモグラフィー読影)、中央放射線部(PET-CT読影)の各専門診療科の協力により運営している。また、胸部X線検査、上部消化管X線検査、頭・胸・腹部CT検査、超音波検査は読影専門医を含め3重~5重の読影を行って診断・判定の精度向上に努めている。

平成22年度(2010年)に導入された上部消化管内視鏡検査は苦痛が少ない経鼻内視鏡を基本とし、本学消化器内科の協力のもと、内視鏡専門医によるダブルチェック体制で運用され、上部消化管検診の精度向上に寄与している。検査件数は増加を続け、実施可能件数上限に達している(表1)が、さらに検査希望者が増加している状況にある。消化器内科医は、内視鏡検査の実施の他、消化器関連の上部消化管X線検査読影や腹部CTおよび超音波検査の読影・判定の点検作業の精度向上にも貢献している。

平成24年度(2012年)導入の動脈硬化・心血管老化診断検査オプションは、2種類の血圧脈波検査機器を組み合わせて、メタボリックシンドロームや高血圧の血管硬化・血管老化への影響や心血管病のリスクを評価し、脈波解析を専門とする循環器内科医による個別の生活習慣改善アドバイスをつけての結果報告を継続しており、好評を得ている。

PET-CTでは、附属病院中央放射線部の協力によりPET-CT画像データ(CD-R)を、結果報告とともに受診者に提供し、検査結果の有効活用と受診者サービス向上に役立てている。

C. コンピュータシステムの高度利用による迅速・的確な健診の運用・管理

健診関連学会標準の判定基準を基本としながらも詳細な問診による病歴情報を考慮した健診専門医の個別判断をも判定ロジックに組み込んだ健診結果判定エンジンは、前年度の健診システム更新作業の中でさらに洗練され、迅速かつ精度の高い健診結果の自動判定を可能にしている。結果判定のみならず、問診による病歴、生活習慣も受診当日の結果説明までにデータとして取り込み、これらの情報を総合的に考慮した上で、標準化された指導メッセージを導出し、健診当日の医師による結果説明を支援するとともに、メタボ対策を中心とした健康指導に役立てている。この健診システムは、膨大な健診・保健指導・会計データの保存・管理を容易にし、特にここ10年においては、旧来の紙媒体を中心とした非効率な業務を無駄の少ないペーパーレス業務に移行させることに寄与してきた。昨年の健診システム更新では網羅的なデータ移行を実施し、過去27年にわたる健診データも一元的にこのシステム内に保管されている。これを必要に応じて随時参照・比較することができるため、受診時の1断面のデータのみならず、個々の受診者の経過や病歴・精査歴を考慮した特異度の高い判定を可能にしている。

さらに、健診システム更新に併せて附属病院情報システムとネットワーク接続され、電子カルテと同じ端末上で健診システムが稼働する環境となり、健診と病院診療間の連携・情報共有を可能にしている。これにより、診療経過や病院での検査結果を考慮した結果判定が飛躍的に容易になり、無駄な精査や再検査の紹介を減らすのに役立っている。

平成22年度(2010年)までに整備されたX線検査を中心とした検査画像のデジタル化とフィルムレス運用(PACSシステム)では、それ以前の過去フィルム画像もデジタイザで取り込み、システムのモニター上での比較参照を可能にしている。これにより医師の読影作業効率および精度向上、フィルム保管場所の問題解決、さらには、紹介状添付画像の充実(必要に応じてCD-Rによる画像データの提供)が実現され、紹介先医療機関における精査診療への円滑な情報提供にも役立っている。平成24年度(2012年度)にオンライン化した眼底画像管理、平成25年度(2013年度)にPACSシステムに統合された超音波画像管理等により、すべての健診画像診断のデジタル化・オンライン化を推進してきた。さらに前年度の健診システム更新では、胸部X線画像に関して、AI(人工知能)に基づく画像処理(骨陰影消去・経時変化の差分強調)を導入して読影精度向上に努めている。

一部のX線画像は読影精度向上のために外部専門医に委託しているが、これもPACSシステムに統合された形で運用している。前年度の健診システム更新に併せて導入されたRISによりさらに画像読影管理の自動化を進めることができ、業務負荷の軽減に役立っている。これらコンピュータシステムによるデータ・情報管理は履歴データや病歴情報に迅速なアクセスを可能とし、読影における異常検出感度を高めると同時に特異性の高い判断により無駄な精査紹介を減らす効果をもたらしている。

D.保健指導

特定健康診査の全項目を含む総合健診結果により、特定保健指導の「動機づけ支援」、「積極的支援」に階層化された受診者に対し、契約に基づいた特定保健指導に対応している。平成21年度(2009年)からは当センターの健診受診者以外の集合契約に基づいた特定保健指導の要請にも対応可能とし、継続している。保健指導は、特定保健指導に関する研修を修了した保健師と管理栄養士が担当している。

平成20~22年度(2008~2010年)の当センターのリピータ受診者のうち肥満の基準を満たす3410名の健診データ解析から、肥満とメタボリックシンドロームの経過を解析した結果、特定保健指導を受けたことにより(指導を受けない場合に比べて)2倍以上の確率で肥満・メタボの改善が期待できることが示されている。

本年は、前年度の特定健康診査・特定保健指導保健指導の制度第3期に合わせて更新し業務全体の再構築を行ってきた健診システム・保健指導システムを活用する段階となった。これを積極的に活用してさらに有効性の高い保健指導を実践すべく努力を継続している。

E.健診システムと保健指導システムの連携

当施設の特定保健指導は、契約団体(保険者)・利用者の要望を重視し、制度開始当初から健診当日の初回指導に対応してきた。迅速な検査と健診コンピュータシステムによる自動判定を生かして、健診受診当日に健診結果が揃うと同時に個別契約条件に基づく特定保健指導対象者を高精度で自動抽出、初回指導まで支援できる機能を健診システムに実装し、日々対応できる体制を整えている。

F.施設認定・資格

認定施設

  • 日本総合健診医学会優良総合健診施設
  • 日本総合健診医学会認定 人間ドック健診専門医研修施設
  • 日本病院学会会員健診施設

認定医

人間ドック健診指導医 宮下  洋
人間ドック健診専門医 宮下  洋 他3名
人間ドック学会 認定医 島田 瑞穂
日本内科学会 総合内科専門医 島田 瑞穂 他1名
日本内科学会 認定内科医 宮下  洋 他4名
日本消化器病学会 専門医 三枝 充代 他1名
日本消化器内視鏡学会 専門医 三枝 充代
検診マンモグラフィー読影医師 三枝 充代
日本外科学会 外科専門医 光田 清佳
日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医 光田 清佳
日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医 光田 清佳
日本旅行医学会 旅行医学認定医 島田 瑞穂
日本医師会 認定産業医 島田 瑞穂 他1名

3.実績・クリニカルインディケーター

総合健診は一日36名を上限として実施している。大手企業や健保組合等の団体との契約によるものが中心になっている。反復受診されるリピータが90%を占めていることから、受診者に満足いただいていることが窺われる。受診者には本学教職員691名が含まれ、特定保健指導と併せて、本学の福利厚生施設としての役割も担っている。

基本的健診項目は、マークシート式および自由記載式問診票による症状・病歴・生活習慣等に関する詳細な問診、身体計測(身長、体重、腹囲、BMI)、視力、聴力、眼圧、眼底、血圧測定、尿検査、血液検査、呼吸機能、心電図、胸部X線検査、上部消化管X線検査、便潜血反応、腹部超音波検査などである。オプション検査としては、PET-CT検査(後日施行)、CT検査(頭部-副鼻腔を含む、胸部-甲状腺を含む、腹部-骨盤腔を含む)、胃抗体検査(ピロリ菌抗体、ペプシノーゲン検査)、腫瘍マーカー、婦人科検診(内診、子宮頸部細胞診)、乳房検診(マンモグラフィー検査、乳腺超音波検査)、骨密度検査(DEXA法)、動脈硬化・心血管老化診断検査に加え、2018年から導入したアミノインデックス(AIRS)を実施している。AIRSは早期がんのリスクスクリーニング(AICS)と糖尿病・心血管病発症リスク評価(AILS)から成り、2019年は総利用者423人のうち5人(1.2%)のがん発見に寄与した。

メタボリックシンドロームが問題とされる近年の状況下、2012年度にオプション検査として開始した動脈硬化・心血管老化診断検査は、2種類の血圧脈波検査装置により、脈波速度(PWV)、足首上腕血圧比(ABI)、血圧増大指数(AI)、推定中心血圧、心血管老化度の評価と、健診結果を総合的に考慮した個別の健康アドバイスの提供を特長とし、導入後5000件を超えて順調に運用を継続した。またCTは通常の検査に比べ撮影範囲を拡げて、頭部では副鼻腔全体、胸部では甲状腺全体、腹部では経腹壁の超音波検査で描出が困難な骨盤腔全体を撮影範囲に含めて評価の対象とし、全身スクリーニングを可能にしている。さらに腹部CTでは、内臓脂肪面積の計測も全例施行してそのレポートを受診者に送付し、メタボリックシンドローム予防・改善に役立てている。

表1に主要オプション検査の実施件数推移を示した。平成31年(2019年)1月から12月まで(健診実日数 239日)の年間受診者延人数は、健診・保健指導含めた受付件数ベースで7296件(一日平均31件)、内 総合健診受診者総数は7000人で、いずれも前年よりさらに減少した。この減少要因としては、内視鏡実施枠不足の影響と、前年度の健診システム更新と機能構築の遅れによる受け入れ制限が影響した可能性が高い。本年の検査件数は、全体にはこの受診者減少を映して2%程度の減少となったが、上部消化管内視鏡のみが増加を続けており、内視鏡検査枠の不足に対する最大限の運用努力(当日の検査実施枠を導入当初の7件→段階的に12件まで拡大するとともに週1回の午後検査枠の運用追加)の効果と考えられる。しかし、それでも総受診者数の増加・回復には至っていないため、本年は全受診者に1年間にわたる内視鏡需要調査アンケートを実施し、50~55%の受診者が内視鏡検査を要望されていることが把握できたとともに、依然内視鏡検査実施枠が不足しており、受診者受け入れ数の制限要因となっていることを確認した。この受診者要望に応えるため、検査順の効率化による内視鏡検査の運用効率の最大化を図るとともに、内視鏡検査の時間枠を拡大できるよう、健診検査運営全体を再構築する抜本的運営改革の準備を推進している。

平成19年度(2007年)から開始となったPET-CT検査、平成20年度(2008年)に導入されたデジタルマンモグラフィー、平成21年度(2009年)に多列化されたCT、そして平成22年度(2010年)導入の上部消化管経鼻内視鏡、さらに本年2月から開始したアミノインデックス検査(AICS)等は健診の精度向上に寄与し、癌の早期発見・診断精度向上に貢献をしている。この1年間の健診およびその後の精査で発見されたがんは52例(2020年3月までの精査結果報告例で疑い例も含む)あり、その内訳を表2に示した。

表3にはメタボリックシンドロームの判定を中心とした受診者の特徴と保健指導実績の年次推移を示した。特定保健指導の利用者総数は、受診者全体の減少傾向とシステム更新の影響から著しい減少となった前年比170%の大幅増(2010~2018年の平均比でも110%)を達成した。保健指導システムを含む健診システム更新後、これを積極的に活用して特定保健指導の効率化を図ってきた効果と評価している。

表1 受診者数と放射線画像関係および内視鏡・血圧脈波オプション検査施行実績推移(1~12月集計)

2014 2015 2016 2017 2018 2019 対2018年比
総受診者(受付件数) 8364 8118 7828 7813 7476 7296 98%
総合健診受診者総数1) 7871 7672 7354 7382 7107 7000 98%
PET-CT 63 76 67 55 61 58 95%
頭部CT 1,330 1,363 1,305 1,211 1,052 1,034 98%
胸部CT 964 1,037 1,018 946 880 859 98%
腹部CT 1,093 1,164 1,136 1,060 968 958 99%
CT部位総件数 3,387 3,564 3,459 3,217 2,900 2,851 98%
マンモグラフィー 1,304 1,434 1,370 1,412 1,341 1,284 96%
骨密度(DEXA) 470 560 489 546 446 412 92%
上部消化管内視鏡 1,837 1,977 2,143 2,631 2,702 2,803 104%
血圧脈波検査 835 921 920 981 874 722 83%

1) 総合健診受診者総数は総受診者数から人間ドック受診日とは別に行うPET検査や後日追加検査、特定保健指導を除いた数

表2 健診で発見されたがんの症例数(1月~12月集計)

がんの種類 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
乳癌 6 14 4 3 5 3
肺癌 4 1 4 7 12 7
食道癌 2 2 2 2
胃癌 4 4 9 7 4 8
十二指腸乳頭部腫瘍 1
大腸癌 7 4 3 8 5
直腸癌 1 3 1 3
膵癌 2 1
肝臓癌 1 1 1
胆嚢癌 2
腎癌 1 2 1 3 4
腎盂・尿管腫瘍 1
膀胱癌 1 2 2 1 1
前立腺癌 2 2 8 9 14 12
子宮癌 1 1 1 1
悪性リンパ腫/
MALTリンパ腫
2 1 1 1 1
多発性骨髄腫 1 4
慢性骨髄性白血病 1 1
間質腫瘍 1 1
転移性肺癌 1
卵巣癌 2 1 1 2
甲状腺癌 1 1 1
盲腸癌 1
直腸カルチノイド 1
肝癌 1
神経原性腫瘍 1
前縦隔腫瘍 1 1
後腹膜腫瘍 1
26 38 45 42 57 52

表3  受診者の特徴とメタボ判定および保健指導実績推移(1月~12月集計)

男性 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年

総合健診受診者総数1) 4425 4219 4126 4079 3909 3889
年齢(平均 標準偏差) 54.4
±10.0
54.6
±10.0
54.7
±10.1
55.2
±10.4
55.8
±10.6
56.0
±10.9



メタボ判定対象者数 4053 3892 3817 3743 3659 3616
判定 メタボ該当 1129 1145 1119 1102 1109 1091
予備軍該当 906 873 857 839 820 816
階層化 積極支援 683 659 646 606 554 493
動機づけ支援 449 440 438 410 416 436








指導契約対象者数 1696 1686 1588 1510 1765 1725
実施実績 積極支援 54 38 55 45 36 70
動機づけ支援 48 24 53 37 27 31
102 62 108 82 63 101
(総計)2) (255) (190) (228) (199) (180) (477)
女性 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年

総合健診受診者総数1) 3446 3453 3228 3303 3198 3111
年齢(平均 標準偏差) 52.4
±9.7
52.9
±9.6
53.2
±9.7
53.2
±9.9
54.0
±10.0
54.4
±10.4



メタボ判定対象者数 3126 3196 3005 3050 2946 2812
判定 メタボ該当 223 255 252 244 259 243
予備軍該当 206 233 214 228 207 225
階層化 積極支援 88 86 95 87 82 84
動機づけ支援 220 230 210 214 199 197








指導契約対象者数 3482 3513 3292 3215 3141 3011
実施
実績
積極支援 70 49 68 56 42 88
動機づけ支援 98 52 93 68 48 64
168 101 161 124 90 152
(総計)2) (369) (303) (331) (299) (225) (644)

1)総合健診受診者総数は総受診者数から人間ドック受診日とは別に行うPET検査や後日追加検査、特定保健指導を除いた数
2) 特定保健指導の総指導件数で、初回指導+中間評価・指導+最終評価・指導件数の合計;利用券による指導(保健指導のみの利用)の件数も含む

4.2020年の目標・事業計画等

急性期医療を中心として発展を続けている医療が経済的には破綻に瀕している状況下、医療政策・医療システムにおける特定健診をはじめとする健診・予防医療の重要性増大が明らかとなっている。このような社会情勢や多様化する受診者ニーズへ対応すべく、当健診センターは「受診者満足を最優先し、健診・保健指導の質的向上をとおして人類全体の健康増進に貢献する」ことを基本理念として運営を継続している。今後も現状維持にとどまらず常にその質的向上と運営効率改善による実績拡大を目指して継続的に努力していく方針で、特に次年度には、前述のように内視鏡を中心とした検査運用枠の拡大と全体の稼働規模拡大を目的とした抜本的運営改革を計画している。

A.健診の課題と計画

1)健診サービスの品質向上

♯1.抜本的健診運営改革

2015年以来の受診者数減少傾向の要因は、主に内視鏡実施枠の不足によるものと考えられ(表1・2)、その実施枠拡大を課題として継続的に取り組み、運営努力により9→12件/日までの実施枠拡大と週1日の後日午後検査枠を運用している。しかし、これでも本年実施した内視鏡需要アンケート結果により、50~55%の受診者(最大21名)の内視鏡希望者全員の要望に応えるのは不可能なことが明らかとなった。検査の2列化早期実現は困難とされ、1列の検査枠を時間的に大幅拡大する方針とした。これを可能にすべく、健診システム全面更新後のシステム構築において内視鏡検査枠運用・制御の幅を拡大できるよう考慮するとともに、健診運営全体の体制と運営変革を伴う抜本的改革を推進する。この改革は次年度の前半を準備期間とし、体制を整備した上で、年度後半からの本格運用を目指す。最終的には、現在1日平均 約30人の受診者を45名まで増やすことを目標としている。

♯2.運営管理の透明化と組織化

2017年から編成したスタッフ全員参加による健診センター内運営組織である「広報・受診者満足」・「環境・安全管理」・「防災」の3つのワーキングサブグループによる健診サービス品質改善の取組は、2019/3/1受審の日本総合健診学会 優良総合健診施設認定 更新実地審査をきっかけに活動を定着させることができたが、2020年はさらに継続性のある活動により、運営課題である前述の健診運営改革における現場の業務改革・効率化、健診結果によるフォローアップ体制の確立、受診者および業務環境の最適化管理、防災体制の確立等を推進していく。これによる健診サービス品質改善は受診者満足を向上させ、受診者減の対策ともなると考えられる。

♯3.健診検査内容の充実

今後の健診需要動向の展望として、持続的人口減少とともにこれまで主要な部分を占めていた職域の受診者の減少が見込まれる一方、2025年に向け団塊世代の高齢化が急速に進むのに伴い健診受診者も高齢化し、健診経験が長く裕福な高齢受診者の増加が見込まれる。これに伴い、より高度の健診内容、多様なオプション検査が求められることが予測され、これに対応すべく新システムでの運用構築に合わせた健診運営全体の見直しの中で、より幅広いオプション検査要望や、さらにはプレミアムドック・医療ツーリズムにも対応できる体制、本院の先端的検査リソースの健診利用による対応・調整等を推進していく。この流れで、2020年度には複数の検体検査オプションおよび簡易睡眠検査の実施体制を整え運用を開始する計画である。

また、個々の受診者にとって受ける意味が大きいオプション検査を的確に選択できるような個別化された情報提供を実現できる仕組みが必要と考え、AI・RPA等の導入検討を継続する。これらが達成できる2021年以降での受診者数と収益の大幅増加が期待できるものと考えている。

♯4. 運営改革のための健診システム利活用

2018年度事業として行った健診システムのこれまでにない大規模更新で、以下の改善が実現できた:

  1. IT・デジタル化のメリットを活用した自動化・省力化・情報共有
  2. 健診委託契約・制度・学会ガイドライン等の変更、検査・機器の更新・追加等の変化への柔軟な対応
  3. 附属病院HISとの連携による健診-病院診療間の情報共有

2019年にはこれに3期カスタマイズとして:

  1. 健診→JUMPカルテ連携
  2. 検査時間・待ち時間管理の改善
  3. 履歴データ管理の自動化の基礎、業務画面表示の大幅改善

等を追加することができ、これらにより、業務でのヒューマンエラーリスク低減、業務効率化による余裕をもった業務キャパシティーの実現、健診サービスの精度・品質向上等を可能にするインフラ基盤が整備される。2020年はこの新システムとHIS連携を活用した健診運営の再構築ともいえる抜本的改革を推進する。前述の如く、この健診運営改革は2020年度前半をこの運営体制再構築を含む準備期間とし、2021年以降に受診者数と収益の大幅増加の達成を目指している。

B.保健指導の課題と計画

2018年に第3期となった特定健診・保健指導の制度変更に合わせて更新を行った健診システムの活用により、本年の指導実績は増加した。さらに効率よく改善効果が出せる保健指導を目指した取り組みを継続することで、利用者満足と指導業務キャパシティーを拡大し、2020年度は保健指導実績をさら本年の50%程度増加させることを目標としたい。

C.医学研究の課題と計画

前述の理念・運営方針にも掲げている如く、自治医科大学附属の健診施設として関連分野への医学的貢献は重要な課題と考え、27年にわたり蓄積されてきた健診データを対象とした臨床疫学的研究(「既存健診データを活用した疾病予防や健康管理に関する探索的観察研究」 臨大16一変070(疫10-17 疫13-9 9変更))をさらに活性化し推進する。これまでに開始もしくは計画を進めている下記の複数の研究テーマを継続し、その成果の発表をとおして医学的貢献に繋げていく計画である:

  1. 血圧脈波指標・中心血圧の健診・予防医学的意義の検討
  2. 健診CT画像の応用解析:内臓脂肪および動脈硬化の評価
  3. 健診内視鏡検査に関連の研究:経鼻内視鏡の鼻出血リスク、ピロリ菌除菌経過
  4. 特定保健指導効果の科学的評価と指導効率の高い指導方法の検討
  5. 健診でのがん発見に関する各検査の感度および特異度評価とその最大化の検討
  6. 胸部X線画像処理(BSD+TS)の肺癌検出精度改善効果の評価
  7. 健診医の診断精度向上のためのデジタルツール開発とその効果の評価
  8. 健診医業務効率化・精度向上のためのAI・RPA応用の調査と開発研究
  9. ハードウェアに依存しない健診データの保管・管理法の検討とその構築
  10. 健診受診者の受付・検査順制御による健診業務・検査業務の最大化アルゴリズムの検討
  11. 健診画像の読影を支援するAIの開発研究
  12. 血圧脈波波形を含む心血管信号波形から正確な血圧を連続推定・モニターするAIの開発研究
  13. ウェアラブルセンサー・非接触センシング等による健診受診者バイタルの連続モニター法の開発研究

健診センターにおけるこれらの研究活動は、健診医の資質や健診センター業務価値の向上、健診業務へのフィードバックによる健診サービスの質向上、さらに結果として受診者満足の向上に繋がるものと考えている。研究結果の発信をとおして人類全体の健康増進に寄与することを目指す。

5.過去実績