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耳鼻咽喉科【アニュアルレポート】

1.スタッフ (2023年4月1日現在)

科長 (教授) (兼)伊藤 真人
(子ども医療センター)
副科長 (教授) 金澤 丈治
(附属病院耳鼻咽喉科)
外来医長 (助教) 鹿島 和孝
病棟医長 (講師) 橋本 研
医員 (教授) (兼)西野 宏
(附属病院耳鼻咽喉科)
(助教) 上村佐恵子
島田 茉莉(医局長)
(兼)野田 昌生
(子ども医療センター)
野澤 美樹
(病院助教) 内田 晶子
紫宮 夏子
後藤 大輝
シニアレジデント   6名

2.診療科の特徴

主として、人と人とのコミュニケーションのための、「聴いて」「話す」ために欠かせない聴覚器と発声器、「呼吸をして」「食べる」ための上気道の病変を扱っている。当科の得意分野は耳領域と喉頭領域である。

耳領域

科長の伊藤のもと、橋本講師、島田助教、野田助教の3名が耳科学チームとして、主たる耳科手術執刀医を務めている。安全・確実に耳の病変を治すとともに、聴力改善を目指した手術治療を行っている。慢性中耳炎(穿孔性中耳炎、真珠腫性中耳炎)、先天性難聴(重度難聴、先天性中耳・内耳奇形)などに対する鼓室形成術やアブミ骨手術、人工内耳手術などの耳科手術や、側頭骨・外側頭蓋底腫瘍(成人の錐体部真珠腫なども含む先天性真珠腫進展例、聴器癌など)に対する耳科外側頭蓋底手術を多数施行している。 難聴外来は主に小児を対象としており、補聴器や人工内耳などの人工聴覚器を扱い、言語聴覚士が補聴器及び人工内耳装用訓練、言語訓練を行っている。補聴器適合検査有資格施設である。聾・高度難聴症例対しては人工内耳埋込手術を成人・小児とも施行しており、他院では行なえないような、手術困難例や重複障害例に対しても積極的に対応している。日本耳鼻咽喉科学会指定の新生児聴覚スクリーニング後の精密聴力検査機関としてスクリーニング後の精密検査、診断、および難聴者の療育も行っている。遺伝子診断は遺伝カウンセリング室と連携し、先天性難聴の遺伝学的検査ならびに遺伝カウンセリングを行い、難聴の原因診断を行っている。

診療科長の伊藤は、「小児滲出性中耳炎ガイドライン」、「小児急性中耳炎ガイドライン」、「小児人工内耳前後の療育ガイドライン」「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言(感染症学会編)」「JAZD/JSC感染症治療ガイド」などの作成に関わり、エビデンスに基づいた耳鼻咽喉科診療の適正化・標準化に努めている。

喉頭領域:嚥下・音声機能

今後の耳鼻咽喉科診療の重点項目と認識し、人材の育成および歯科口腔外科、リハビリテーション科との診療連携をすすめている。嚥下リハビリ、嚥下改善手術、誤嚥防止手術を施行している。県内を中心とした関連職種への啓蒙や、摂食・嚥下医療の地域連携を確立すべく活動をしている。

また、もう1つの喉頭の重要な機能である音声の障害に対する取り組みも重視している。機能性発声障害に対する音声リハビリなどの保存的治療の他に、声帯委縮症や反回神経麻痺に対して喉頭枠組み手術も導入し音声の改善に努めている。

また、これまで入院が必要であった声帯ポリープや声帯結節に対しても日帰り手術である声帯内薬剤注入療法を行って良好な結果を得ている。更に、治療経験がなかった痙攣性発声障害に対しても音声リハビリ、ボツリヌス毒素の声帯筋への注入、更に、甲状軟骨形成術Ⅱ型の導入により良好な結果を得られるようになってきている。

鼻領域

内視鏡下鼻副鼻腔手術による鼻副鼻腔疾患の治療成績は向上し、患者の満足度も高い。難易度の高い手術も増え、ナビゲーションシステムや新規の手術機器を積極的に用いて、難易度の高い手術の安全性も高まった。外来診療の一環としてレーザーによる下鼻甲介焼灼法を施行している。十分な結果が得られない場合には鼻中隔矯正術+粘膜下下鼻甲介骨切除術+粘膜下層のレーザー焼灼術+後鼻神経切断術もしくはそのいずれかを行っており、満足の行く結果が得られている。減感作治療に関しては従来行われていた皮下免疫治療に加え、舌下免疫治療を行っている。慢性副鼻腔炎例に対する内視鏡下副鼻腔手術や鼻腔腫瘍に対する内視鏡下腫瘍切除術なども積極的に行っている。下垂体腫瘍についても脳神経外科と共同で年間数十例ほど経鼻内視鏡下手術を行っている。髄液漏に対しても経鼻的手術での対応を行い、良好な経過を得ている。

口腔咽頭領域

睡眠時無呼吸症の重症度評価を専門外来にておこなっている。Nasal CPAPおよび口腔装具の導入および導入後評価を関連診療科とともに行っている。手術においては、主として小児の睡眠時無呼吸症に対して、安全で術後疼痛も軽度な内視鏡下パワーデバイス被膜内口蓋扁桃摘出術Powered Intracapsular Tonsillotomy & Adenoidectomy (PITA) を積極的に採用するとともに、口腔咽頭科学会の「パワーデバイス扁桃手術マニュアル」作成を行なっている。

頸部領域

甲状腺機能亢進症および原発性副甲状腺機能亢進症の外科手術に取り組んでいる。高難易度の甲状腺癌手術も数多く施行している。

悪性腫瘍領域

Cancer Boardにおいて関連診療科と症例検討をおこない治療方針の決定および最新の知見を取り入れるようにしている。医師のみではなく、看護師、歯科衛生士、NSTなどを含む多職種で症例の検討会を行っている。治療の目標は、癌の根治性と治療後の生活の質の両立である。治療前に患者生活基盤を整える必要がある場合は、患者サポートセンターと協力して対応をしている。上顎洞癌に対する集学治療は、国内外より高い評価を得ている。定位放射線治療、化学放射線治療、分子標的薬治療、免疫チェックポイント阻害薬、頭蓋底手術など幅広い治療方法の選択が可能である。

小児耳鼻咽喉科領域

慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎、聴器腫瘍、先天性などの小児難聴(人工内耳手術、先天性中耳・内耳形成異常)、小児滲出性中耳炎、反復性中耳炎、睡眠時無呼吸症、顔面神経麻痺や上気道狭窄の評価・治療などを行っている。手術では、耳科領域では慢性(化膿性)中耳炎、真珠腫性中耳炎に対する鼓室形成術や、人工内耳を手術困難例や重複障害にも積極的に行っている。小児滲出性中耳炎に対しては、日本耳科学会の「小児滲出性中耳炎診療ガイドライン」作成委員長・担当理事として、ガイドライン初版および改訂版の作成にあたり、エビデンスに基づいた適正治療に努めている。睡眠時無呼吸症に対しても、安全で術後疼痛も軽度なマイクロデブリッターやコブレーターなどのパワーデバイスを用いた内視鏡下被膜内口蓋扁桃摘出術Powered Intracapsular Tonsillotomy & Adenoidectomy (PITA) を積極的に採用するとともに、その有用性を全国に向けて啓蒙している。

診療科長の伊藤は、現在日本小児耳鼻咽喉科学会の理事長として、我が国の小児耳鼻咽喉科の発展に寄与している。(詳細は、小児耳鼻咽喉科アニュアルレポート2021を参照)

施設認定

  • 日本耳鼻咽喉科学会認定医制度指定施設
  • 日本アレルギー学会認定医制度指定施設
  • 日本頭頸部外科学会認定頭頸部がん専門医制度研修施設
  • 日本耳科学会認可研修施設

専門医

日本耳鼻咽喉科学専門医 伊藤 真人 他9名
日本気管食道科学会専門医 金澤 丈治
日本がん治療認定医機構がん治療認定医 金澤 丈治
西野  宏
日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医 金澤 丈治
西野  宏
日本耳科学会認定手術指導医 伊藤 真人
日本耳鼻咽喉科学会補聴器相談医 伊藤 真人 他8名
日本癌治療学会臨床試験登録医 西野  宏
日本アレルギー学会専門医 今吉正一郎
日本嚥下医学会認定嚥下相談医 金澤 丈治
西野  宏

3.診療実績・クリニカルインディケーター

1)新来患者数・再来患者数・紹介割合

新来患者数 1,157人
再来患者数 15,027人
紹介率 95.6%

2)入院患者

2022年 入院患者数内訳(病名別)
入院件数:750件
領域 病名 患者数
突発性難聴、急性感音難聴 17
先天性真珠腫、真珠腫性中耳炎 47
滲出性中耳炎 19
慢性中耳炎 39
耳硬化症、伝音難聴 4
中耳奇形 2
先天性耳瘻孔 14
外耳道腫瘍 2
中耳腫瘍 1
外耳癌 1
顔面神経麻痺 9
メニエール病 6
感音難聴 7
めまい症 8
外リンパ瘻 2
前庭神経炎 2
その他 7
小計 187
鼻・副鼻腔 鼻出血 7
アレルギー性鼻炎 2
急性副鼻腔炎 1
鼻中隔彎曲症 9
慢性副鼻腔炎 52
術後性上顎嚢胞、副鼻腔嚢胞 6
鼻副鼻腔良性腫瘍 3
鼻副鼻腔悪性腫瘍 10
頭蓋底悪性腫瘍 4
その他 11
小計 105
口腔・咽喉頭・頸部 急性咽喉頭炎・急性扁桃炎 21
扁桃周囲炎・膿瘍 31
習慣性扁桃炎 8
慢性扁桃炎、扁桃病巣感染症 33
声帯ポリープ・結節 8
声帯委縮 4
反回神経麻痺 13
喉頭腫瘍 5
口腔咽頭腫瘍 3
顎下腺腫瘍 7
耳下腺腫瘍 24
顎下腺唾石症 4
甲状腺腫瘍 25
副甲状腺腫 16
バセドウ病 4
正中頸嚢胞 2
頸部腫瘍 5
頸部膿瘍 16
頸部リンパ節炎 2
上咽頭癌 2
中咽頭癌 18
下咽頭癌 29
喉頭癌 16
甲状腺癌 49
耳下腺癌 24
顎下腺癌 2
舌癌 5
原発不明癌 7
その他の頸部悪性腫瘍 14
気道狭窄 12
睡眠時無呼吸症 12
アデノイド増殖症 4
嚥下障害 5
その他 28
小計 458
合計 750

3-1)手術 症例数:674件

2022年
領域 術式 件数
鼓室形成術 90
乳突削開術 30
鼓膜形成術 11
人工内耳手術 10
アブミ骨手術 2
顔面神経減荷術 4
内リンパ嚢開放術 3
先天性耳瘻管摘出術 9
鼓膜チューブ挿入術 30
その他 5
鼻・副鼻腔 内視鏡下副鼻腔手術 99
内視鏡下鼻中隔手術 25
粘膜下下鼻甲介骨切除術 18
後鼻神経切断術 4
涙嚢鼻腔吻合術 3
鼻副鼻腔悪性腫瘍手術(切除) 3
鼻副鼻腔悪性腫瘍(切除再建) 1
その他 6
口腔・咽頭喉頭・頚部 口蓋扁桃摘出 50
アデノイド切除術 13
喉頭微細手術 18
喉頭狭窄症手術 4
気管切開術 40
頸嚢摘出術 2
喉頭形成手術 29
喉頭下咽頭手術(切除再建) 1
下咽頭ESD 4
頸部郭清術 17
耳下腺腫瘍摘出術 26
顎下腺摘出術 12
深頸部腫瘍切開術 10
嚥下改善手術 4
その他 13
甲状腺・副甲状腺 甲状腺片葉切除 45
甲状腺全摘 18
副甲状腺腺腫摘出術 15
合計 674

3-2)術後合併症

術後出血 3例
反回神経麻痺(一過性) 8例
反回神経麻痺(永続性) 1例
唾液漏 1例

4)化学療法症例・数

臨床腫瘍部および皮膚科と連携し全身薬物療法を施行している。日本がん治療認定医機構がん治療認定医および日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医の資格をもつ耳鼻咽喉科医師のもとに全身薬物療法がおこなわれている。全身薬物療法療法は69名におこなわれ、内容はROS1/TRK阻害薬:1人、Nivolumab:5名、Penbrolizumab:7名、5-FU+Cisplatin/Carboplatin+Penbrolizumab:15人、Docetaxel+Cisplatin+5-FU:6名、Lenbatinib:11名、weekly-Paclitaxel+Cetuximabまたはweekly-Paclitaxel:8名、Cisplatin+5-FU +Cetuximab:1名、Cisplatin+5-FU:2名、Tegafur/Gimeracil/Oteracil:13名であった。

5)放射線療法症例・数

放射線治療は49人におこなわれた。36人が放射線治療単独(根治11人、術後7人、緩和18人)、13人が抗がん薬同時併用の放射線治療(根治12人、術後1人/Cisplatin:10人、Carboplatin:3人)であった。

6)悪性腫瘍の疾患別および臨床進行期別ならびに治療法別治療成績

カプランマイヤー法を用いた5年全生存割合(%)を表にしめす。治療法の選択は、病理型、病期、社会的背景、患者さんの希望などを総合的に判断し、個々の症例できめている。治療の目標は、癌の根治性を損なう事なく、形態と機能保存をおこなうことである。治療成績の向上とともに異時性重複癌をみとめる場合が過去と比べ多くなってきている。今後はこの異時性重複癌の治療が課題と考える。

病期 I II III IV
上顎洞癌 なし 100 77 69
声門癌 100 95 95 88
声門上癌 100 96 82 76
上咽頭癌 100 80 75 78
中咽頭癌 100 83 77 70
下咽頭癌 100 69 70 64
口腔癌 90 91 88 60
甲状腺癌 100 100 96 95
唾液腺癌 100 94 95 76

7)死亡症例

死亡症例 15例
死因 原病死
剖検数 0例

8)外来手術

術式 件数
鼓膜切開術 28
鼓室内注入術 1
鼓膜換気チューブ留置術 11
外耳道生検 5
鼓膜形成術 7
内視鏡下副鼻腔手術 4
鼻茸切除術 6
鼻腔生検 51
副鼻腔生検 7
下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術 1
扁桃生検 15
舌生検 9
甲状腺生検 3
上咽頭生検 15
中咽頭生検 15
下咽頭生検 8
喉頭生検 9
喉頭注入術後 8
声帯生検 12
口腔生検 1
口唇生検 1
口蓋生検 1
頸部リンパ節摘出・生検 59
気管孔閉鎖術 1
耳下腺生検 9
顎下腺生検 2
皮下腫瘤切除術 1
皮下組織生検 5
小唾液腺生検 1
合計件数 297

9)カンファレンス症例

①診療科内

術前カンファレンス:毎週水曜日(16時30分~)

②他科との合同

放射線科/臨床腫瘍科合同カンファレンス:毎週月曜日(17時30分~)

③他職種との合同

病棟看護師とのカンファレンス:入院患者カンファレンスに準じる

10)キャンサーボード

月1回、科を横断しての症例検討を行っている。

【参加診療科】臨床腫瘍科 放射線科 消化器外科 消化器肝臓内科 歯科口腔外科 胸部外科 呼吸器内科 病理診断科 耳鼻咽喉科 泌尿器科 脳神経外科 緩和科 泌尿器科

【実績】年 12回

1月 2月 3月 4月 5月 6月
1回 1回 1回 1回 1回 1回
7月 8月 9月 10月 11月 12月
1回 1回 1回 1回 1回 1回

4.2023年の目標・事業計画等

新患者数の確保:耳鼻咽喉科各領域の患者数は専門医教育に十分な人数が確保されている。

スタッフの増員:診療体制と学生・専攻医の教育の充実、研究の遂行のためにはスタッフの充実が必要である。2022年は2人のベテランスタッフと2名のレジデント(専攻医)の増員がはかられた。引き続きスタッフの確保をはかる。

診療結果のフィードバック:臨床試験、治療結果を検証し報告する。

新たな診療技術の習得:内転型痙攣性発声障害の症状改善外科手術チタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術2型、人工聴覚器手術の術者育成を引き続き進める。

5.過去実績