医療保育士の活動【アニュアルレポート】
1.医療保育士の役割
当センターでは病気を抱える子どもとその家族のQOLの向上を目指すことを目的に、複数の医療専門職と連携を図りながら保育を実践している。以下に医療保育の目標を記載する。
<医療保育の目標>
1.子どもに対しての目標
- 安全と安心を提供する
- 生活を整える
- 発達を促進する
- 恐怖や苦痛、不安、ストレスへの対処を支援する
- 地域とのつながりの維持、拡大を支援する
2.保護者に対して
- 不安、ストレスを軽減する
- 子育てのスキルを獲得し、自信を持てるようにする
- ソーシャルサポートにつなげる
- きょうだいへの支援
患児個々の成長発達状況や安静度等多方面からアセスメントをし、他職種と協働しながら必要な支援を計画し実践している。そして、個別保育や集団保育をとおして、医療保育の目標を達成できるような介入をしている。
2.院内活動
1)2021年度の活動と主な行事
医療保育士は2A病棟2人、3A病棟3人、4A病棟3人の計8人が配属されており、当該部署およびNICU、PICUの保育も実践している。
今年度はコロナ禍でも通常に近い保育の提供ができるように工夫しながら保育を実施した。3A病棟では、言語発達や食行動の獲得を促す必要のある患児など、対象患児を選択し動物のフェイスシールドを作成して口元が見えるように支援を行った。4A病棟では、学童を対象に月1回個別に「お楽しみ会」を実施した。終了後病棟の壁に順位を掲示することで、個室入院中の学童が「同じように頑張っている児がいるんだ」と他児への存在に気づくことにつながった。また、治療や学習の意欲が低下していた学童が、お楽しみ会が生活の楽しみの一つとなり、頑張る意欲へとつなぐことができた。
部署ごとの行事は、患児と家族が季節感を味わうことができるように感染予防に努めながら工夫して行った。
Covid-19の感染拡大予防のため、例年行われていた子ども医療センター全体での行事は、取り止めた。
集合して行事が開催できない中で、地域や公益財団法人等からいろいろなプロジェクトの提供をいただき、オンラインいちご狩りや絵本カーニバル、ハートフルカートなどを開催し、患児や家族が楽しいひとときを過ごすことができた。
2)医療保育士ラダー
医療現場における保育士が、医療保育実践能力を向上させ、子どもや家族に質の高い保育を提供できることを目的に、保育士ラダーを実施している。今年度は子ども医療センター教育検討会で、保育倫理研修【Ⅰ】保育展開【Ⅰ】保育展開研修【Ⅱ-A】の見直しを行った。
3)保育士会
保育士会を定例で開催し保育士が行う係活動の報告、保育記録の充実やアセスメント力を高めるための勉強会を開催した。以下に係活動の内容を記載する。
(1)記録係
目標:保育記録の質の向上を図る
昨年度完成した保育記録監査表を基に、7月と2月の2回記録監査を行った。今後も保育記録の質的監査を実施し、保育の質を高めていくことが課題である。
(2)業務係
目標:保育士業務基準・手順の追加項目を検討し作成する。
入院高校生教育支援の手順、保育士会の運用を作成した。部署ごとの保育に関するデータを見直し、「子ども医療センター保育士取り決め事項」として全部署統一したファイルを作成した。次年度は保育士業務基準・手順に沿って業務を行い、内容の見直しをする予定である。
(3)勉強会係
目標:個別性に合った保育を実践するために、必要な情報収集をして分析できる。
事例から情報を収集し、分析・保育上の課題を抽出することを目的に保育事例展開の勉強会を実施した。2回目の勉強会は、情報収集シートを使用し、保育事例展開を行った。今後は収集した情報から的確にアセスメントができるようにしていくことが課題である。
3.院外活動
- 子ども療養支援協会主催 令和3年度子ども療養支援士養成コース講師「遊びと保育」「多職種との協働」
- 第14期日本医療保育学会資格認定取得研修会 講師
- 日本医療保育学会認定「医療保育専門士」口頭試問審査